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Kawamura International
アメリカのビジネスは、今
- 2019年11月7日
今、アメリカのビジネスシーンはどうなっているのだろう?
困難をどう乗り越えたのか。成功の鍵はどこにあるのか。
キーパーソンに、アメリカでのビジネスのヒントを聞いた。
アメリカで翻訳と通訳を行うKawamura InternationalのManaging Director森口 功造さんに話を聞いた。
アメリカでの事業内容、プロジェクト等の紹介
川村インターナショナルは翻訳と通訳を行うランゲージサービスプロバイダーです。
90%以上がビジネスにおける産業翻訳になります。
日本ではビジネスを開始して33年目となり、社員も50名ほどいます。IT・ソフトウエア業界のクライアント向けへのローカライズが主要なビジネスです。日本の中でも特殊で、約5割のクライアントが海外の企業です。そのため香港・カオルーンにも現地法人を置いており、それに加えドイツ・ケルンにJV、その後、2年前に北米の拠点を立ち上げました。
英語・日本語の翻訳を必要とするクライアントの割合は約7割でそれに次いで多いのは、スペイン語、ポルトガル語、タイ語。鉄道会社のインバウンド向け広告も弊社でローカライズをさせていただきました。
ヨーロッパはEU内で各国が自国の言葉を保存という動きが強く、翻訳が盛んです。そのため、フランス語、イタリア語、ドイツ語、スペイン語、ポルトガル語(FIGS+P) の5カ国語は昔から必須の言語となっています
北米拠点立ち上げの経緯
IT 企業向けのローカライズにおいて、クライアントと自社との間に代理店が入ってビジネスをする場合に、コミュニケーションエラーが起こることが多々ありました。そこで、北米はLAに拠点をおくことでコミュニケーションを円滑にすることを図りました。
シリコンビーチの動きもあり今後成長が見込めるため面白いのと、日系コミュニティの歴史が長くビジネスも盛んなため、LAでのビジネス拡大には期待しています。
現在抱えている課題
北米と日本ではマーケティング手法が異なります。例えば、日本の場合はFace to face を好むのですが、北米は電話会議で済むことがほとんど。ウェビナー(=ウェブセミナー)やオンラインでのmtgが北米ではさかんですが日本はそれに対して抵抗があります。そういった違いを理解し円滑にビジネスを進めることはチャレンジです。
また、日本でビジネスをしている人のほぼ100%が翻訳を必要としていますが、アメリカの場合は英語で足りていて、翻訳を必要としない場合も多い。そのため巨大な北米マーケットにおいてニーズを拾うのが難しい。翻訳に興味関心のあるアメリカ人にどのようにリーチするかが課題です。
川村インターナショナルの強み
日本には約2500の翻訳会社があります。その中でも弊社は規模が大きく、大量の案件に一気に取り組めることが1つ目の強みです。
他社にできないソフトウエア開発のテストや環境のローカライズを行なっていますのでITの分野においては横綱です。2つ目は東南アジア系の言語に強いことです。LAにおいて、東南アジア系の言語への翻訳をしている日系翻訳会社は少ないため、弊社とお仕事いただくメリットになります。3つ目は機械翻訳ビジネスに長けている点です。機械翻訳のエンジンは、国立研究開発法人の情報通信研究機構が開発しており、弊社が最初にその商用化を開始しました。コンピュータの演算能力は年々速くなり、機械翻訳の精度はますます高くなり、マーケットは毎年7%の成長率があります。
また、精度が高くなったとはいえ、機械翻訳においては、まだまだ誤訳や訳抜けが発生するリスクがあります。弊社は機械翻訳の出力結果を翻訳者が事後修正をする「ポストエディット」を特に各業界に特化して注力しています。
グーグル翻訳などでは現状業界に特化した精確な翻訳は難しいので弊社のケイパビリティは重宝されています。
ただし、あくまで機械翻訳は一文単位の翻訳なので人間のように行間は読めません。そのため、おかしな翻訳になることもまだあるため、人間が直している部分も多くあります。社内でのみ共有される文書ならば機械翻訳でいい場合はほとんどですが、外にでる文書、例えばIR情報や法律関係の文書などは人間が翻訳するのがいいと考えています。機械、人間、ハイブリッド、複数のオプションを提供できるので、予算や時間が限られた中で、クライアントのニーズに合わせて最適で効果的なサービスを提供できるのが弊社の強みになります。
今後の展望
機械翻訳とポストエディット、従来の人による翻訳の使い分けをコンサルティングしながらクライアントにサービスを展開し、言語の壁をできるだけ減らすことです。
「テクノロジーを活用して新しい言語サービスを創造する」ことが企業理念の1つですので、人が直すだけではなくいろいろなことを自動化して負担を軽くしていきたいですね。北米では、まずはカリフォルニアで基盤を作るのが現在のフォーカスになります。
新しい試みとして、社内での翻訳業務が頻繁に発生するクライアント向けに、自社内で使えるTranslation Designerというブラウザベースのツールを提供しています。これにより、クライアントが弊社に発注する時間とコストを削減することができます。
Translation Designer以外に現在開発中のものも含めテクノロジーを活用したツールが多くありますが、その中でもWebアプリケーションの実際の画面を見ながらUIを翻訳できるようなツールを日本で初めて提供しています。
これまで必須であったテキストで翻訳してそのあとにUIを見ながら確認して直して、というプロセスがなくなるのでここでもまた、時間、コストが短縮されます。日系のITサービスプロバイダーには好評を得ています。
アメリカにビジネス進出を考えている企業、個人へのアドバイス
B2B企業向けのアドバイスになりますが、1つは、アメリカの現地法人を立ち上げる際の人的リソース、コネクションを作ることです。弊社は会計士さんや弁護士さんなど、拠点を開設する上で必要なリソースとの繋がりがあったため、スムーズにセットアップができました。
もう一つは積極的に人と直接会うことがとても大事です。クライアントだけに限らず、LAの場合は例えば日系コミュニティとの関係性を築き、情報を集めることが必須だと考えています。
Kawamura International
■ホームページ:https://www.k-intl.co.jp/
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