こどもの言葉の力を磨く!
読書のススメ

小学校期

読書後は感想を話し合う

小学生のお子さんには、年齢別ではなく日本語の習熟度レベルで絵本、挿絵の少ない本、活字の多い本を数冊選書するのがポイントです。選書はこども本人の自由が望ましいですが、そのこどもの日常をよく知る大人が、ほんの少し難しい本、挑戦する本を薦めるとぐっと関心や意欲が違ってきます。まずは下読みをして作品の理解を深めてから、お子さんにゆっくり、はっきり、心をこめて読んでください。ユーモアのある長新太さんの『ゴムあたまポンたろう』(童心社)やなぞなぞの本をはじめ、対話がたくさんできる本で言葉への関心が高まると良いですね。易しいレベルの絵本から多読して、「こんなに読んだね」というのも自信になります。

『ゴムあたまポンたろう』長新太

学年相当の日本語力を持つお子さんには、難度をプラス1上げて抽象度の高い読み物を一緒に読み、内容を話す時間をお持ちください。偉人伝、自己犠牲、SDGsなどの内容も、9・10歳でもプライドを持って読もうとします。「誰と誰が出てきた?」「なぜか分かったでしょ?」と本を問題集みたいにしないこと。感動した所や、ここは分かりにくかったけれどこういうことだと思うなど、お母さんが言葉を補います。お子さんが光った感想を言ったら、大いに褒めてください。たどたどしくても日本語の発言を焦らせず、温かく最後まで聴きましょう。

 

本を読むための環境づくりを

「こどもに読書の楽しさ・必要性を分かってもらうにはどうすれば良いですか?」という質問をよくもらいます。そんな時、そっとお尋ねすることにしています。「お母さんは本を読むのはお好きですか」「ひと月に何冊、雑誌や週刊誌以外の読書をなさいますか」「お子さんと同じ本を読んで話し合ったことがありますか」「読書はなぜ必要なのですか」。

読書は体験ですから環境づくりがおすすめです。まず、リビングにお子さん専用の本を置くスペースを作ってください。もちろんお母さんのも独立して。本は大事、日本語も大事というメッセージが日常生活の一隅に常に存在するようにしましょう。

補習授業校の小学2年生を受け持った時、英語から訳された絵本作品が教科書にあり、原書を教室に持って行きました。英語のほうがすでに得意だったこどもたちは喜びました。ある母親が、日本にいる祖母に日本語訳がある絵本をまとめて送ってもらいました。母親は息子用の書棚を作り、並べていたそうです。しばらくの間、親子で両方を楽しみ、英語偏重の危機を乗り越えたと報告をもらいました。

 

生活体験の充実が
読解力・思考力につながる

こどもを見ていると、充実した体験には必ず仲間がいて、遊びにしても相談して冒険が遂行されます。そして楽しいこと、はらはらしたこと、喧嘩したことなど、過程で起こるさまざまな事件は誰かに伝えたくなります。それには多くの語彙や表現方法が必要になります。日本語の出番です。勉強も聞くだけではだめで、学んだことを人に伝えるとしっかり身に着くといわれます。言葉の学習も同じでしょう。

調査によると、本を読む冊数の減少は止まっているようですが、読解力低下は数の問題ではなく、五感を使う体験の機会が減少していることから来る問題だと思っています。文章を読み解く力が読解力ですが、その解を自分なりに解釈して誰かに伝えることが重要な時代になっています。間接的であっても、自然の中で自由に仲間と遊ぶ体験や家庭の中で体を動かして物を創る体験など、体験量が豊富だと多様な物の見方ができます。読解力はコミュニケーション能力だともいわれます。豊かな体験は、豊かな人とのつながりも創造するというわけです。

 

10歳の壁を乗り切ろう

「10歳の壁」という言葉をご存知ですか。ここ10年ほど、こどもの成長は9・10歳にかけて大きく転換すると指摘されるようになりました。抽象的な概念を理解するとか、自分を客観的にとらえ自己肯定感や劣等感を持つなどがその傾向です。現実的には学習に躓くこどもが出てきたり、人間関係に悩むこどもが出たり、成長の「壁」、言い換えると「挑戦に値する変化」が見られる時期だといわれています。こどもたちに読む本も、幼児期と小学校の低学年、小学3・4年生向けに読む本とではこのことを意識して選書をしています。主人公と同じ学年の3年生には児童虐待の『どーしたどーした』(集英社)、4年生には祖父の死を描く『かないくん』(ほぼ日)、『かたあしだちょうのエルフ』(ポプラ社)は自己犠牲がテーマです。

文字が読めるようになると、読み聞かせをしなくなるお母さんが多くいます。しかし、この10歳の壁の時期こそこどもに寄り添い、一緒に本を読み合う挑戦に値するのではないでしょうか。活字の本への移行期にこそ、日本語へのサポートが求められていると思うのです。

『どーしたどーした』天童荒太・荒井良二

『かたあしだちょうのエルフ』小野木学

『かないくん』谷川俊太郎・松本大洋

<取材協力>
宮地敏子
ニューヨーク補習授業校教諭、洗足学園短期大学幼児教育科教授、デリー大学東アジア研究科講師を経て、現在は国際幼児教育学会理事。海外子女教育振興財団の通信教育「幼児コース」の監修を担当。児童書に『サムライハット ニューヨークを行く』、翻訳絵本に『やまあらしぼうやのクリスマス』『ぞうのマハギリ』、共著で花鳥風月をテーマにした友禅染絵本『はなともだち』『あいうえおつきさま』など。

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