第79回 かわいい子には旅

ロサンゼルス在住の大分県人会メンバー有志と大分県立杵築高校からの高校生とで記念写真

少し前の話になる。7月末、私が所属する大分県人会と、大分県立杵築高校からロサンゼルス研修にやって来た4人の高校生と引率教師とで懇親会を持つ機会があった。彼らは10日間、オレンジ郡のアメリカ人家庭にホームステイし、午前中はカリフォルニア大学アーバイン校で英語の集中授業を受け、午後はロサンゼルス地域の日系企業やビバリーヒルズ市役所、ロサンゼルス港を見学した。これは、同校が生徒をグローバルな人材に育成する目的の「志四海(ししかい)プロジェクト」の一環で、今年がその1回目。

懇親会では、4人の高校生が10日間のロサンゼルス滞在でどのような経験をして、何を思ったかをプレゼンテーション形式で県人会メンバーを前に発表した。臼井結衣さんは「英語のクラスでは韓国や中国から来た大学生の英語が上手なことに驚いた。英語が話せればどんな人とも仲良くなれるのだということが分かり、ますます英語をがんばろうという気持ちになれた。そして今回の研修を経て、国内で過ごすのは物足りないと思うようになった」と語った。また、松原由依さんは「日系企業の社長さんが、アメリカ市場に日本の商品を持ち込んで挑戦している姿が素晴らしいと思った」、岩下凛さんは「ロサンゼルス港の森本さんから、アメリカに住む日本人がこの土地で受け入れられているのは、日系アメリカ人や長く住んでいる日本人の努力があってのことだと分かった」と、これまで知らなかったアメリカやアメリカの日本人の姿に触れて感銘を受けたと話した。彼らは短期間ながらさまざまな物を見て経験し、「インスパイア」されたのだということが伝わってきた。

彼らには、今回のアメリカ研修が、きっと今後の人生の転機になるだろう。自分の日常とは違う世界を見て経験することで人は触発され、世界は広い、多様性に溢れていることを知る。それによって自分とは違う価値観も認めるという視野の広さが育まれる。「かわいい子には旅をさせよ」というが、昔の人の言葉は、実に真実を突いている。きっとその旅先は海外ではなかったはずだが。

日本の高校生に感銘

私はこの懇親会に、秋から高校のシニアになるニナを連れて行った。日本の高校生と交流してほしいという気持ちだけでなく、選ばれてアメリカにやってきた彼らの発表を見て、ニナがインスパイアされることを望んだからだ。その目論見は的中し、「日本の高校生がすごくしっかりした意見を持っていて、すごいと思った。また、プレゼンテーションの前半では一生懸命英語で話す姿に感動した。発音は良いとは言えないけれど(失礼!)十分何を言っているか分かったし、よく調べてまとめていた点が素晴らしかった」と感想を述べた。

日本の高校生たちはたった10日間でも「日本とは違うアメリカ」に気づくことができた。一方、ここアメリカには期間限定で海外生活を送っている日本人駐在員の子どももいれば、ニナのようにアメリカで生まれ育った日系の子どももいる。彼らにはアメリカ生活は日常的であって、新しい発見に満ちているわけではないかもしれない。しかし、どれだけ恵まれた環境にいるか、また、世界中にルーツを持つ多様なバックグラウンドの友人に囲まれているか、そのことに気づいているだろうか。

杵築高校の生徒たちは秋の文化祭でロサンゼルス研修のことを発表すると話していた。彼らの発表がほかの高校生たちにも間接的に刺激を与えてくれることを願っている。ちなみにニナが日本の高校生と交流することで日本の大学を受験する気持ちが生まれれば、と期待したが、その目論見は外れてしまったようだ。この原稿を書いている11月初旬、ニナはアメリカの大学の申請準備中。結果が出る2020年春までドキドキの日々が続く。

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福田恵子 (Keiko Fukuda)

福田恵子 (Keiko Fukuda)

ライタープロフィール

東京の情報出版社勤務を経て1992年渡米。同年より在米日本語雑誌の編集職を2003年まで務める。独立してフリーライターとなってからは、人物インタビュー、アメリカ事情を中心に日米の雑誌に寄稿。執筆業の他にもコーディネーション、翻訳、ローカライゼーション、市場調査、在米日系企業の広報のアウトソーシングなどを手掛けながら母親業にも奮闘中。モットーは入社式で女性取締役のスピーチにあった「ビジネスにマイペースは許されない」。慌ただしく東奔西走する日々を続け、気づけば業界経験30年。

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