マインドフルネスで
心のストレッチ!

過去や未来に囚われず、 “今この瞬間を大切にする生き方” として注目を集めているマインドフルネス。今や大企業でも導入されているマインドフルネスとは何なのか、その魅力と、今日からでも始められる実践方法などを紹介する。

 

マインドフルネスとは?

 

マインドフルネス(Mindfulness)=“今この瞬間” の心の状態に向き合うこと

私たち人間は、今この瞬間を生きているようでいて、実際には過去や未来に対する思考に常に囚われている。特に失敗や不安、他人からの評価といったネガティブな思考に支配され、自分自身にストレスをかけている人も多い。マインドフルネスとはこうした無意識に頭に浮かんでしまう要素を鎮め、今この瞬間の自分自身に意識を向けて、あるがままの状態を知覚し受け入れることを目的とした瞑想方法。

マインドフルネスという考え方が世に広まったのは、1979年のこと。ジョン・カバット・ジンという博士が、マサチューセッツ大学の医療センターでマインドフルネスストレス緩和プログラム(MBSR)を開発した。これは、ストレスや悩みごと、痛みといった慢性疾患の治療を目的として、禅やヨガの瞑想手法を活用することで生み出されたプログラム。実際に8週間マインドフルネス瞑想法を行った後でMRIを使い脳を調べてみると、扁桃体(危険察知や怒りの感情を生む)の反応が緩やかになり、海馬と前頭前野(記憶、自意識、学習などの働きを司る)が活性化し、ストレス軽減・記憶力アップの効果が見られたという科学的裏付けがある(Sara Lazar, Ph.D.他 2010University of Massachusetts Medical School)。以来、臨床心理学や精神医学といった世界ではマインドフルネスをベースとしたさまざまな治療法が応用開発されている。

 

 

マインドフルネスのメリット・デメリット

メリット1
集中力アップ
マインドフルネスは余計な考えを捨てる作業のため、目の前のことに集中する力を養うことができる。管理職を被験者としたハーバード大学の調査によると、マインドフルネスを行った後のほうが作業スピード、集中力、記憶力それぞれの数値がアップし、パフォーマンスが向上した。

メリット2
ストレスに関する遺伝子減少
自身の内面を見つめて理解を深めることで、自分の感情をコントロールできるようになる。ワシントン大学の実験では、慢性的にストレスを感じている被験者に対してマインドフルネスを6カ月間実施した結果、被験者のストレスに関する遺伝子数が減少したことが判明した。

メリット3
抗炎症効果
オハイオ大学の調査では、乳がんを克服した被験者がマインドフルネスを3カ月実施したところ、血液中の3つの炎症マーカーの数値がそれぞれ10〜15%減少した。マインドフルネスは精神的な安定だけでなく、身体面での抗炎症効果も期待できることが分かっている。

デメリット1
ストレスや鬱状態の悪化
ありのままの自分と向き合うことで自分自身の嫌な部分を自覚し、かえって自己肯定感の低下や不安感の増大を引き起こしてしまう場合がある。また、自己流に行った結果、リラックスできず逆に興奮してしまうことも。そんな時は一度中断し、心に余裕が生まれた頃に再開しよう。

デメリット2
瞑想への依存
マインドフルネスに頼りすぎると瞑想が快感になって追い求めてしまい、外の世界の嫌なことから逃げるように内にこもってしまう場合がある。人によっては禅病にかかり、幻覚や幻聴といった症状が現れることもあるそうだ。何ごともやりすぎは禁物。

 

 

企業でも導入されている

近年は企業の人材不足が問題となっており、労働過多による従業員のメンタルヘルスの問題が多発している。また、業務効率化や生産性の向上といった働き方改革に頭を悩ませる企業も多い。この状況を打開する一つの方法として取り入れられるようになったのが、マインドフルネス。従業員のメンタルヘルスを整えることができれば業務効率化やパフォーマンスの向上につながり、組織全体としても労働力を安定させることができる。瞑想で得られた集中力により、新しいアイデアが生まれやすくなったというケースもあるようだ。

導入例

Google
社員が開発したマインドフルネスメソッド「Search Inside Yourself(SIY)」は、生産性の向上や社員の昇進を実現。ビジネスシーンにおいて非常に画期的な考えとして著書にもなっている。

 

Apple
創始者であるスティーブ・ジョブズ氏は創造性の向上を目的とし、技術者を中心にマインドフルネスを導入。ジョブズ氏自身も重要なプレゼンテーション前にはマインドフルネスを行っていた。

 

 

Goldman Sachs
マインドフルネスを導入した結果、2014年にビジネス雑誌『Fortune』において「もっとも働きがいのある企業」として前年の90位から45位へ躍進。導入例が雑誌で取り上げられ、世界中から注目を集めた。

 

 

Sansan
2018年に日本企業として初めてマインドフルネスを採用した、名刺交換ソフトで有名な企業。対象を全マネージャーとし生産性向上を図った結果、80%がマインドフルネスの効果を実感しているという結果が出た。

 

このほかにも、Yahoo!やメルカリ、丸井グループなど、マインドフルネスを活用する企業数が上昇中!

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