将来に役立つお金の教科書2023
- 2023年10月2日
- 2023年10月号掲載
プロに聞く!
アメリカの保険とソーシャルセキュリティ
生命保険とソーシャルセキュリティも、アメリカにおける資産形成としては大きな部分を占めている。日本の保険や年金制度とどのように異なるのか、留意しておくべきポイントなどを、その道のプロに聞いた。
生命保険
日本との違い
アメリカの生命保険は日本と比較して保険料が格段に安く、利回りもはるかに高いため資産運用商品として有効です。日本で若いうちから保険に入っていたとしても、プラン内容を比較後にアメリカの生命保険に切り替える方も多くいます。ご自身の目的にあったプランを持つことにより、将来の非課税のリタイヤメントプランとして個人年金のように使うこともできます。また、0歳から加入できるので、お子様の場合は長い目で見て非常に有効的な貯蓄資産となります。少しでも安い保険料で保険に入りたい場合も、資産運用に使いたいという場合も、ご自身の目的に沿った保険商品が見つけられるので検討することをおすすめします。なお、死亡保険金に関しては、金額にかかわらず受取人に非課税で残せる点が日本と大きく異なります。
保険料が安い、効率の良い資産運用の金融商品として使える、アメリカの税法を活かした節税が可能という点は、アメリカの生命保険の大きなメリットです。ただし、資料などはすべて英語で、日本に帰国してもアメリカの銀行口座を持ち続ける必要性が高いのはデメリットといえるでしょう。
アメリカの保険の加入資格
加入資格は保険会社によって異なります。ソーシャルセキュリティナンバーがないと加入できない場合もあれば、TINナンバーだけで加入可能な場合もあります。ただ、どちらかは必須です。また、グリーンカードを持っていないと加入できない会社もあれば、以前ビザを持っていて、今すでに不法滞在になってしまっている場合でも加入できる会社やプランもあります。
アメリカの保険プラン
アメリカの保険プランには、大きく分けて掛け捨て型と終身貯蓄型があります。それぞれにメリットもデメリットもありますので、ご自身の必要性に応じて2種類を組み合わせて使うのが効率的です。
・掛け捨て型
決まった保障金額、決まった期間だけ保障が必要な方に向いています。お子様が大きくなるまで、モーゲージが終わるまで、といった使い方が賢い使い方といえるでしょう。
・終身貯蓄型
固定金利や変動金利で増えていくもの、一括払いで一生涯の保障を買ってしまうもの、毎月好きな金額を保険料として納めていくもの、とさまざまなタイプがあります。
収入が固定でない自営業等の方には、保険料がフレキシブルなプランが好まれます。リスクを負わず、高利回りでCash Valueを育てたい場合はIUL(Indexed Universal Life)が人気です。最近は介護保険を特約として付加できるものが多いですが、将来、日本でのリタイヤメントを考えていらっしゃる方は、日本でも使える介護保険特約を選ぶと良いでしょう。
迷ったらプロに相談を
保険は種類が豊富にあるうえ、決して安い買い物ではなく長いコミットメントになります。オンラインで申し込む方も多いですが、エージェントに頼んでもオンラインで自分で入っても保険料に変わりはありません。可能であれば、信頼できるエージェントに相談しながらご自身に合うものを選ぶことをおすすめします。また、遅くなればなるほど高価な買い物になるので、1歳でも若いうちに、少しでも健康なうちに加入すると良いでしょう。
ソーシャルセキュリティ
ソーシャルセキュリティ制度とは
アメリカで個人を認識するIDとして発行されるのが、ソーシャルセキュリティナンバー。アメリカ市民以外では、合法的にアメリカ国内で働ける移民が取得可能な番号です。この番号を持っている個人は、アメリカ国内で就労して得た収入からソーシャルセキュリティ税を納め、そのクレジットを貯めていくことによって、将来、アメリカ政府が運営している公的年金制度から老齢年金を受けることができます。その他、配偶者年金、障害年金や遺族年金等があります。
受給資格、受給年齢
アメリカで年金を受給するためには、基本的にはこの制度に10年間加入する必要があります。しかし、日米社会保障協定(2005)により日本で加入していた年金の加入年数が加算可能になったので、アメリカで最低6クレジット(1年6カ月の就労期間)があり、日米通算で10年以上働いていれば受給可能になりました。年金を満額受給できる年齢は生年によって異なり、1960年以降に生まれた人は67歳とされています。62歳から受け取ることもできますが、自身の満額受給年齢前だと減額されます。
配偶者年金もあり、ご自身が働いて税金を納めていなくても、最低期間の婚姻期間を満たしていれば配偶者としての受給額(受給者の半額)を受給できます。また、すでに離婚して独身の場合でも、10年間の婚姻期間があれば配偶者年金の受給資格があります。ただし、62歳になっても受給者本人が受給を申請するまでは、配偶者年金は受給できません。未亡人の場合は60歳から受給を開始できますが、自身の満額受給年齢前だと減額されます。
制度を理解しておこう
ソーシャルセキュリティは大切な老後の資金源の一つですが、制度が複雑でルールが多いので分かりにくいのが難点です。ソーシャルセキュリティの受給額の計算方法、離婚した場合や日本からの年金受給がある場合など、ケースバイケースで異なります。受給する際になってから後悔しても遅いので、ソーシャルセキュリティ税を納められるうちに制度を理解しておくと、将来の受給についても予測できます。リタイヤメントプラン作成に向けて、毎年一回はオンラインでご自身のソーシャルセキュリティのステイトメントを確認することをおすすめします(www.ssa.gov)。
取材協力
堤 聖子
Social Security Analyst / Life insurance Agent (CA Lic#:0H62600)
Financial Planning & Education Service
Email: info@fpesusa.com / satokona@gmail.com
URL: www.fpesusa.com
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