日本帰国後の銀行口座開設、海外送金について

日本へ永住帰国する際に考えておかなければならないことの一つに、日本の銀行口座があります。以前、日本居住時に使っていた銀行口座が残っていればそれをそのまま利用することができますが(銀行によっては帰国後更新手続きが必要)、日本を出国する際に口座をすべて解約した、または出国後も口座を残していたが銀行側に解約されてしまった、という場合は新たに口座開設の手続きが必要となります。以前(5~10年ほど前)であれば住民票と身分証明書で口座開設が簡単にできましたが、ここ数年は犯罪増加を背景に金融規制が厳しくなり、口座開設が簡単にはできなくなっているという話をよく聞きます。実際のところはどうなっているのでしょうか?

帰国後すぐに開設できる?

口座開設できる時期については日本国籍、外国籍によって対応が分かれます。

1. 日本国籍

帰国後、市町村役場で住民登録すれば銀行口座開設が可能となりますが、その際の提示書類として写真付きの身分証明書、具体的には運転免許証(もちろん日本のものです)またはマイナンバーカード(「マイナンバー通知書」ではありません)が必要です。海外に居住していたので日本の運転免許証をお持ちの方はほとんどいないと思いますが、外国の運転免許証をお持ちの場合でも日本の免許証への書き換えが可能です。ただし、一定の手続き(書類の準備と簡易試験の受験)があるため時間がかかります(2~4週間程度)。

一方、マイナンバーカードは居住地(転入地)の市町村役場で住民登録した後に、「個人番号カード交付申請書受付センター」へ郵送またはオンラインで申請することで受領できますが、申請から受領まで1~2カ月程度かかります。つまり、帰国後1~2カ月は口座開設ができないことになります。

なお、これらは原則的なルールで、銀行によってはその他複数の身分証明書(保険証、パスポート、国家資格証など)でも対応してくれる場合があるので、各銀行に問い合わせることをおすすめします(もしくは後述の「ネット銀行」をご参照ください)。

2. 外国籍

外国人は、日本帰国後6カ月間口座開設することができません。これは外為法(外国為替および外国貿易法)により、日本入国後6カ月未満の外国人は原則「非居住者」と見なされるためです。現在金融機関はこの法律に従って、6カ月を経過していない外国人の口座開設を認めていません(※1)

ただし、全面的に開設できないというわけではありません。まとまったお金を常に携行したり家に保管しておくのは防犯上危険ですし、公共料金の支払いなど日常生活においては銀行口座が利用できないのはとても不便です。そうした事情のため、以下の方法で帰国後すぐに口座開設することができます。

ネット銀行の利用(国内取引のみ)

最近、店舗(支店)を持たないネット銀行が増えてきています。有名なところではセブン銀行、楽天銀行、ソニー銀行、SBI新生銀行などがあります。これらのネット銀行のうち、一部の銀行では外国人でも帰国後すぐに口座開設できるところがあります。当社で最近(※2)調べた範囲では、auじぶん銀行、あおぞら銀行の2社で開設可能でした。

その際必要となる書類は、スマートフォンによる開設手続きの場合は在留カードだけです。PCでの開設手続きの際は在留カードの他、パスポートなどもう1種類の身分証明書が必要となります。

なお、ネット銀行では口座開設しても海外取引(外国の金融機関との送金・受取)を行うことはできません。海外資産を日本の自分の口座へ送金するには、どうしても6カ月待って通常口座を開設しなければなりません(※3)

企業に就職する

企業に就職するとその企業の従業員として管理下に置かれること、また給与の振込先としての銀行口座が必要になることから店舗のある銀行(都市銀行、地方銀行、信用金庫など)でも口座開設が可能となります。ただし、すべての銀行で可能となるわけではありませんので、詳細は各銀行、支店にお問い合わせください。

日本での生活費など、海外預金を日本の口座に移管(送金)できる?

前述の通り、もともと日本に銀行口座が無ければ送金先の口座がないわけですから、口座開設するまで移管できません。家族(配偶者や親、子など)の口座に送金するという方法も可能ですが、金額によっては贈与と見なされるたり(贈与税が発生)、送金理由によっては銀行が送金してくれない可能性があります。

一方、帰国後の日常生活費として必要な額(たとえば毎月20~40万円程度)であれば、日本にあるコンビニや郵便局のATM(端末)で海外口座からお金を引き出すことも可能です。日本で引き出すためにはその海外の銀行へ連絡し、「今後日本に帰国するため、日本の金融機関ATMから預金引き出のための手続きを教えてほしい」とリクエストします。そうすると海外での預金引出用のカードが提供されると思います(一部の銀行ではそうしたサービスに対応していないこともあるので、個別にお問い合わせください)。

いかがでしょうか?金融機関の国際事務手続きや外国人の口座開設については、規制内容が時間経過とともに変わったり各社の対応が異なったりしているためとても理解しづらいです。上記は当社が業務上で確認した時点の情報をベースに紹介していますが、ご自身で手続き等を行う場合は事前に各金融機関へ連絡し、情報確認するようにしてください。

<備考>
※1 財務省「外国為替法令の解釈及び運用について」別紙(居住性の判定基準)
参照:https://www.mof.go.jp/about_mof/act/kokuji_tsuutatsu/tsuutatsu/TU-19801129-4672-15.pdf
※2 2023年7月末時点
※3 どうしても早期に日本へ送金しなければならない、という方がいれば個別に弊社へご相談ください。

★★無料オンラインセミナー(ウェビナー)のご案内★★

日本の親や将来の自分のために 〜日本の介護まるわかりセミナー〜
●日時:10月15(日)PST 4:00pm
●詳細・申込先Webサイト:http://www.life-mates.jp/1015KJ


この記事が気に入りましたか?

US FrontLineは毎日アメリカの最新情報を日本語でお届けします

蓑田透 (Minoda Toru)

蓑田透 (Minoda Toru)

ライタープロフィール

早稲田大学理工学部卒業後、総合商社入社。その後子会社、外資系企業等IT業界で開発、営業、コンサルティング業務に従事。格差社会による低所得層の増加や高齢化社会における社会保障の必要性、および国際化による海外在住者向け生活サポートの必要性を強く予感し現職を開業。米国をはじめとする海外在住の日本人の年金記録調査、相談、各種手続きの代行サービスを多数手がける。またファイナンシャルプランナー、米国税理士、宅建士、日本帰国コンサルタントとして老後の日本帰国に向けた支援事業(在留資格、帰化申請、介護付き老人ホーム探し、ライフプラン作成、不動産管理、就労・起業、税務等の相談・代行)や、海外在住者の日本国内における各種代行、支援サービス(各種証明書の取得、成年後見など日本在住の老親のサポート)を行う。

●豊富な実績に基づくていねいなサポートで
ひっきりなしに持ち込まれるお客様からの国際手続きに関する多種多様なご依頼、ご相談(お悩み)を断り切れず休日返上で対応しているうちに、気がつけば(年金、日本帰国といった当初の事業以外の)あらゆる分野のノウハウを備えたオールラウンドコンサルタントに。当社で対応できないケースでも、的確な解決方法や提携先の他分野専門家を紹介します。

ホームページ:ライフメイツ(ライフメイツ社会保険労務士事務所)
 日本帰国・年金・国際手続き相談室
 企業経営改善・助成金相談センター
 障害年金相談室(提携先)

この著者への感想・コメントはこちらから

Name / お名前*

Email*

Comment / 本文

この著者の最新の記事

関連記事

アメリカの移民法・ビザ
アメリカから日本への帰国
アメリカのビジネス
アメリカの人材採用

注目の記事

  1. 今年、UCを卒業するニナは大学で上級の日本語クラスを取っていた。どんな授業内容か、課題には...
  2. ニューヨーク風景 アメリカにある程度、あるいは長年住んでいる人なら分かると思うが、外国である...
  3. 広大な「バッファロー狩りの断崖」。かつて壮絶な狩猟が行われていたことが想像できないほど、 現在は穏...
  4. ©Kevin Baird/Flickr LOHASの聖地 Boulder, Colorad...
  5. アメリカ在住者で子どもがいる方なら「イマージョンプログラム」という言葉を聞いたことがあるか...
  6. 2024年2月9日

    劣化する命、育つ命
    フローレンス 誰もが年を取る。アンチエイジングに積極的に取り組まれている方はそれなりの成果が...
  7. 長さ8キロ、幅1キロの面積を持つミグアシャ国立公園は、脊椎動物の化石が埋まった岩層を保護するために...
  8. 本稿は、特に日系企業で1年を通して米国に滞在する駐在員が連邦税務申告書「Form 1040...
ページ上部へ戻る