変化の波が押し寄せるソーシャル・セキュリティ・アドミニストレーション

2025年に入ってまだ3か月ですが、ソーシャル・セキュリティ・アドミニストレーション(SSA)に次々に大きな変化の波が押し寄せています。今回の記事では、SSAの最新事情についてアップデートします。

Social Security Fairness Actによる棚ぼた防止規定(WEP)の廃止

朗報!ソーシャル・セキュリティの棚ぼた防止規定(WEP)等を廃止する法律が成立」でお知らせしたように、2025年1月5日のthe Social Security Fairness Act of 2023の成立により、ソーシャル・セキュリティ税対象外の雇用に基づく年金を受給している人に対して、ソーシャル・セキュリティ給付を削減してきた2つの条項、Windfall Elimination Provision(WEP、棚ぼた防止規定)とGovernment Pension Offset(GPO)が廃止されました。

これまで日本の厚生年金と米国のソーシャル・セキュリティを同時に受給すると、WEPによる減額の可能性がありましたが、この法律により、減額を受けてきた受給者の年金が増額されることになります。

SSAの最新情報 によると、2024年1月まで遡った過去分(retroactive benefits)について3月までにほとんどの支給を終える予定です。また毎月の支給額の増額は、通常2025年4月振込分(2025年3月分給付)から反映されるとしています。

すでに年金受給中でMy Social Security(SSAのオンライン・アカウント)の住所、振込先口座などの情報が最新の場合、特に受給者側で必要な手続きはありません。現在SSAは急ピッチで処理を進めており、個別の問い合わせは4月まで待つように推奨しています。

経費削減のためのリストラ

SSAは、トランプ大統領の大統領令に沿い、イーロン・マスクの政府効率化省(DOGE)とともに、アグレッシブなコスト削減に取り組みはじめました。

具体的には、人員を5万7千人から5万人に12%削減する計画です。また金額的には、人件費、オフィスの閉鎖・スペース削減、IT予算カットなどの施策により、2025年に8億ドル以上のコスト節約が見込むとしています。

またSSAは2024年から、何らかの理由で発生した過払い額の返還をソーシャル・セキュリティ給付から徴収する場合、徴収率を給付の100%から10%に軽減していました。しかし2025年3月28日からは、新規に判明した過払いについて、徴収率をもとの100%に戻すことを発表しています(既存過払いは10%継続)。この施策により、今後10年間で約70億ドルの過払い金回収が可能になるとしています。

ソーシャル・セキュリティ加入者・受給者への影響

SSAの行く末、イーロン・マスクの言動、DOGEの関与などについて様々なニュースが飛び交っており、まずは正確な情報に基づいて、落ち着いて事態を見守ることが大切でしょう。

ただでさえ人員不足、予算不足が指摘されていたSSAですので、リストラによるサービス・レベルの低下が懸念されます。加入者・受給者としては、処理に時間がかかることを見越して手続きを行う(アポは早めにとる)、オンラインで可能な手続きはオンラインで行うなどの心がけが必要そうです。

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後藤浩 (Hiroshi Goto)

後藤浩 (Hiroshi Goto)

ライタープロフィール

Goto Financial Advisory LLC 代表
東京大学経済学部卒。早稲田大学大学院経営管理研究科修士(MBA)第一生命、PwC勤務後、年金基金向け運用コンサルタント、米系資産運用会社の執行役員など25年の資産運用業界経験を有する。2023年に在米日本人のためのフィナンシャル・プランニング法人、Goto Financial Advisory LLC設立。 リタイアメント・プランニングに役立つブログ多数掲載中。 2019年よりテネシー州在住。Sister City of Nashville 理事。資格:CFA協会認定証券アナリスト、米国税理士、認定ソーシャル・セキュリティ・アナリスト

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