Asahi Intecc USA, Inc.
アメリカのビジネスは、今

今、アメリカのビジネスシーンはどうなっているのだろう?
困難をどう乗り越えたのか。成功の鍵はどこにあるのか。
キーパーソンに、アメリカでのビジネスのヒントを聞いた。

医療器具の研究開発、製造、販売を手がけるAsahi Intecc USA, Inc.のCEOである寺井芳徳さんと、COOを務める犬飼一覚さんに話を聞いた。

ビジネスの内容

私どものビジネスは3つあります。一つ目は朝日ブランドの医療器具の販売。二つ目は医療器具メーカーや産業系メーカーに当社がデザインしたワイヤー系の部品を収めるコンポーネントビジネス。そして三つ目がOEM(Original Equipment Manufacturing)やODM(Original Design Manufacturing)と呼ばれる事業で、主にアメリカの医療器具メーカーの要望を聞いて当社で設計・開発・製造し、お客様がそれを自社ブランドとして販売する、相手先ブランドのビジネスです。

主力商品となるのが血管系のデバイスです。血管の中にコレステロールなどが詰まって血液が流れなくなった時に起こるのが、心筋梗塞。その時に、手や足の血管から細い管を通します。まずはガイドワイヤーという0.35ミリのワイヤーを血管に通し、詰まった所まで到達させます。このガイドワイヤーが線路のような役割となり、そこにカテーテルと呼ばれるチューブを通します。チューブの先には風船がついており、それを膨らますことで詰まった血管が開き、血流が戻ります。これが現在の心筋梗塞における治療の主流となっています。

イメージ図

とはいえ、この器具を扱うには繊細な作業が伴います。血管というのは当然枝分かれしているので、詰まった血管にワイヤーを持っていくには操作性が問われます。このワイヤーにいかにトルク(回転・駆動力)を持たせるかという部分において、当社の製品は非常に高い技術を有しています。長年の蓄積によるノウハウで、ワイヤーの伸び率や硬さ、引っ張り強度など、ガイドワイヤーに向いた素材作りから一貫してこだわって製造しているのが、当社の最大の強みですね。

アメリカ進出の経緯

たまたまうちの製品の評判を聞きつけたアメリカの著名なドクターから直接コンタクトがあって、朝日の製品をアメリカでもなんとか使えないかというお話をいただきました。

心筋梗塞で、血管が完全に詰まって固まってしまうCTO(慢性完全閉鎖病変)といわれる特殊な症例があるんですが、当時、それに対する日本の先生の手術の成功率が異常に高かったんですね。日本の成功率75%に対して、アメリカは50%あるかないかでした。なぜこの難しい症例に対して日本の先生の成功率の方が高いのかというのが海外で目に留まり、その手術に使われていた当社のワイヤーが注目を集めることになったんです。

なんとかアメリカに進出できないかといろいろ調べましたが、やはりハードルが高くて。FDAの規定も厳しいですし、PL法などの法的リスクもあり、用心して進めていかなければということが分かりました。それで、まずは2000年3月に駐在事務所を起こし、ネットワークを作りながら情報収集を始めました。法人化したのは2004年です。

駐在事務所をオープンした時は、まずはパートナー探しからでしたね。これは一番苦労しました。アメリカは代理店や卸問屋ではなく、メーカーさんが直で病院に売り込むことが多いので、なるべく競合にならない中で、できるだけ対等に商売ができるような所を探しました。

駐在員事務所を起こした時は1名のみ。2年目からは2名、法人化した時は5名くらいでした。今は118名います。社員の割合としては、現地社員が7割ほど。営業、マーケティングはほとんどアメリカ人です。

日米の違い

日本とアメリカでのビジネスの違いは、すべてですね(笑)。デシジョンメイキング一つ取ってもそうですし、各ポジションの人たちが持つ権限も、物事の考え方も。アメリカの人たちは短期的に考えるけど、日本人は長期で物事を考えますよね。物を買う時の購買プロセスも違う。日本の病院はドクターがある程度購入権限を持っているけど、アメリカですと購買部が強いなど、日本とは異なるカルチャーがあるので全然違いますね。

それでも、日本の先生のCTOにおける成功率の高さなどが学会ではデータで発表されているので、そのエビデンスに基づいて先生方がうちの製品の性能に興味を持ってくれて、性能を評価してくれたことが、ここまで成長できたポイントでしょうか。

現地社員とのコミュニケーション

ローカライズしなければならない部分と、日本の企業としてのDNA的なものとをどううまくハイブリット化させるか、というところが経営における最大の課題です。現地社員とのコミュニケーションを円滑に進めるうえで、一つのチームに日本人が固まるということがないようには心がけていますね。駐在員であってもどっぷりとアメリカ人のグループに入り込んでいる人もおり、そういった人間が中心に、日本とのコミュニケーションが絶えないような工夫はしています。お互い話し合っていかないと、なかなか理解し合えないので。

今後の展望

朝日インテックUSAの中で一番大きな課題は、直販を成功させることですね。今年の7月から本格的に活動をスタートしました。医療器具メーカーですので、経営理念の根底にあるのは社会貢献はもちろん、患者さんの「Quality of Life(QOL)」を上げること。朝日インテックの技術を組み込んだ製品が世の中に広がっていくことが、我々の社会貢献やQOLを上げていくことに必ず繋がると確信を持っています。

また会社全体としては、3年前から研究開発をアメリカでスタートしました。世界でもメディカルデバイスにおいて、アメリカは新しい製品を開発しやすいインフラがあります。こちらで開発をスタートさせて、アメリカの先生方の声を聞きながら製品を作っており、ちょうど最初のプロジェクトがあと1年くらいで完了します。そういった活動も今後力を入れていきたいと思っています。

Asahi Intecc USA, Inc.

■ホームページ:http://asahi-inteccusa-medical.com
■住所:3002 Dow Ave. Suite 212 Tustin, CA 92780
■電話番号:949-756-8636

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