出産について考えよう Vol.5
〜染色体異常について〜
- 2018年10月1日
不妊治療や卵子提供、代理出産など、妊娠に関する悩みを持つ人は多くいます。そんな方々のために、不妊治療をサポートする専門のエージェンシー「LA Baby」が、不妊治療の可能性や選択肢の正しい情報を紹介していきます。
前回の記事で、高齢出産による染色体異常のリスクに関してご説明しました。染色体異常と聞くと先天性疾病のダウン症を思い浮かべる方が多いですが、次に多いのは先天性の遺伝子疾患であるエドワーズ症候群です。今回はエドワーズ症候群とパトー症候群について、もう少し詳しくお話しします。
エドワーズ症候群とは
私たちの体の細胞には、23対46本の染色体があります。23対のうち1~22番目までは「常染色体」、23番目は「性染色体」です。エドワーズ症候群は、その18番目に異常がある場合に発生する遺伝子疾病です。
エドワーズ症候群の多くは自然流産してしまい、出生したとしても、生後1年の生存率は10%程度です。生まれてくる赤ちゃんは頭が小さく体重が少なくて、後頭部が突出している特徴があります。
エドワーズ症候群は1960年に、イギリスのジョン・エドワーズ医師によって報告されました。それまではエドワーズ症候群の解明に世界中の医師たちが苦労しましたが、エドワーズ医師の想像力によって原因を追究できたといわれています。
原因を解明したエドワーズ医師は、9歳まで本を読むことができませんでした。その代償として、彼の思考能力、つまり考える力を身につけたといわれています。ジョン・エドワーズ医師は、2007年10月11日にお亡くなりになりました。他界する前年まで医師として活動し、たくさんの患者様がジョン・エドワーズ医師の想像力によって救われました。
パトー症候群とは
あまり聞きなれないかもしれませんが、赤ちゃんに起こる染色体異常にパトー症候群もあります。パトー症候群は、13番目の染色体が3本あることで発生します。パトー症候群の場合、大半は自然流産します。たとえ出産したとしても、重度の疾病や身体障害により、80%の赤ちゃんが生後1カ月以内に亡くなってしまいます。
パトー症候群の具体的な治療方法は今のところなく、赤ちゃんの容態が安定していても、いつ異変が起こるか分からないため、常に病院と連携を取りながら育てていくことが必要です。一昔前は、パトー症候群などの染色体異常は妊娠後の羊水検査などでしか発見することができませんでした。幸い医療技術が進歩した現在は、着床前診断によってこれらの染色体異常の受精卵を見つけることができるようになりました。
着床前診断の選択
着床前診断の技術やデータは、日々進歩しています。特にここ数年の技術は目まぐるしい変化を遂げています。先日の学会でも、アメリカの大手総合病院「メイヨー病院」から全米の着床前診断のデータが集められ、興味深い発表がありました。
技術やデータがものすごいスピードで進化していく時代ですので、弊社のような卵子提供コーディネーターやコンサルタントは、クリニックとともに最新情報を共有し、患者様に最新の情報をご提供する必要があります。私たちは、医療学会や過去の実績データなどを元に、最先端の技術を常に取り入れるよう努めています。
卵子提供プログラムでも、着床前診断を行う選択肢はございます。私たちは着床前全染色体検査(PGS)の最先端技術、Next Generation Sequencing(NGS)で着床前診断を行っています。また着床前診断(PGS)では、受精卵の段階ですべての染色体を調べ、染色体異常の有無を調べることが可能です。着床前診断を行うことにより、正常な受精卵のみを移植することが可能です。患者様お一人お一人、置かれた立場や環境が異なります。ご自身の事情に合った選択肢の一つとして、頭の片隅にしまっておいてください。
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