米国の酒類業界が自動運転車に注目し始めている。ワシントン・ポストによると、その背景には飲酒運転による事故の撲滅と利益率向上という狙いがある。
▽業界団体、未来移動連合に加盟
全米で約400社の酒類卸業者で構成される業界団体の米ワイン・アンド・スピリッツ卸売り業者(Wine and Spirits Wholesalers of America=WSWA)は、自動運転車推進団体の未来移動連合(Coalition for Future Mobility=CFM)に加盟した。
さらに、飲酒運転撲滅運動を展開する非営利団体のアルコール責任推進財団(Foundation for Advancing Alcohol Responsibility=FAAR)も、自動運転車の商用化を推進する法案支援に署名した。FAARには、バカルディ(Bacardi)を含む酒類メーカー大手4社が加盟している。
▽酩酊運転防止策には昔から注目
WSWAとFAARがもっとも懸念している案件の一つは、飲酒運転と公共安全だ。禁酒法がかつてあった米国では飲酒に対して敏感であり、飲酒運転をきわめて問題視する社会的風潮もある。
FAARのラルフ・ブラックマンCEOによると、米酒類業界では、飲酒によって自動車運転が困難な人を運転させない技術を長年にわたって模索してきた。
▽自動運転車が最有力防止策になると期待
これまでは、革新的な飲酒防止技術は開発されていない。しかし、飲酒運転は減少傾向にある。それでも、疾病対策予防センター(CDC)によると、米国では飲酒運転によって1日あたり28人が死亡している。
ウーバーやリフトといったモバイル配車&相乗りサービスの普及が減少傾向に寄与しているとみられる。
そうしたなか、酒類業界や飲酒運転撲滅運動団体の一部では、自動運転車が酩酊運転防止技術の最有力候補になるという期待を強めている。そういった人たちは、すでに市場に出回っている部分的自動運転機能では不十分で、完全自動運転技術が欠かせないと考えている。
▽酒類の売り上げが2500億ドル増える見込み
WSWAが自動運転車の推進に加わった理由には、自動運転車によって運転義務から解放されることで飲酒機会が増え、酒類業界の活性化につながるという期待もある。
モルガン・スタンリーが2017年9月に発行した調査報告によると、自動運転車が実用化されることで酒類の売り上げが年間2500億ドル増えると予想される。その額は、米国内で一人あたりの飲酒量が1週間あたり2杯増える計算になる。
▽自動運転トラックで流通コスト削減にも期待
そのほか、自動運転車によって酒類業界の物流コストが大幅に下がるという期待もある。たとえば、自動運転トラックを利用することで運転手の人件費を大幅に下げることができることが予想される。
バドワイザーのブランドで知られる発泡酒大手アンハイザー・ブッシュ(Anheuser- Busch)は、商業向け自動運転技術を開発する新興企業オットー(Otto)と2016年に提携しており、自動運転トラックをコロラド州ですでに導入している。
配達車の自動化によって、運転手の人件費だけでなく物流管理の効率化とコスト削減も可能になると期待される。
【https://www.washingtonpost.com/news/wonk/wp/2018/03/13/why-the-liquor-industry-wants-to-get-self-driving-cars-on-the-road/?utm_term=.621b6eef6686】 (U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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