米銀行業界では昨今、機械学習に代表される人工知能を人材採用に活用することを積極化させつつあるが、偏向データ(データの中身の偏り)によって訓練された機械学習アルゴリズムが解析結果に偏見をもたらすことも認識しており、導入に慎重なところがまだ多い。
人材資源(HR)管理以外での業務では、たとえばオンライン顧客サービスや与信判断といった分野で機械学習技術の活用が進んでいる。しかし、人材採用では事情が異なるようだ。
ペイメンツ・ジャーナル誌によると、バンク・オブ・アメリカ(Bank of America=BoA)は、採用するのにふさわしい人材候補を絞り込むのに人工知能を活用したいと考えているが、差別や偏見が反映される可能性を排除できないため、幹部らは躊躇している。
BoAのキャロライン・アーノルド法人技術(人材資源管理技術を含む)責任者は、「たとえば、だれがうちの会社で成功するかを人工知能に聞くとすると、機械学習エンジンは、ゴルフをする人が成功するだろうという解析結果を出すかもしれない」と指摘する。
「同じ手法を使って、特定の趣味や属性情報を無視するという解析モデルを書くことで、そういった偏見や差別を排除できるが、偏見や差別の要因を別の要素にすげ替えるだけという結果につながる」。
そのため、人工知能エンジンは、人材採用において最終決定をくだす方法にはならないだろう、とアーノルド氏は考えている。
一方、人材斡旋人工知能ソフトウェア開発新興企業ハイヤード(Hired)のミヨ・パテルCEOは、人工知能も人間も偏見を持っていることを前提としながらも、人工知能に学習させるデータの内容によって「差別や偏見をある程度は取り除くことができる」と話す。
ただ、偏見を完全に排除することはほぼ不可能に近い、とパテル氏も認めている。それでも、「人間が抱える課題は、偏見と意思決定を簡単には切り離せない」ため、「アルゴリズムによる偏見は、人間による偏見よりはるかに小さくなる」と指摘する。
【http://paymentsjournal.com/boa-confronts-bias-machine-learning/】 (U.S. Frontline News, Inc.社提供)
この記事が気に入りましたか?
US FrontLineは毎日アメリカの最新情報を日本語でお届けします
最近のニュース速報
-
2024年4月29日 アメリカ発ニュース, ハイテク情報, 米国ビジネス
米商務省、TSMCのアリゾナ工場への投資を提案 〜 米中緊張悪化を背景にチップの国産化に重点
-
ディープフェイク、金融サービス業界をいよいよ標的に 〜 生成人工知能による音声模倣で詐欺急増は必至
-
2024年4月25日 アメリカ発ニュース, 米国ビジネス, 自動車関連
広告嫌いのテスラが一転、積極展開
-
ビットコイン半減は価格にいかに影響するのか 〜 最高値更新から乱高下、次の半減期が目前に
-
2024年4月22日 アメリカ発ニュース, 米国ビジネス, 自動車関連
ボルティモアの橋崩落、輸出・小売業者に影響
-
米国のMBA課程、人工知能分野の教育を積極化 〜 会社で求められる技能に学生側も関心を強める
-
2024年4月18日 アメリカ発ニュース, 米国ビジネス, 自動車関連
テスラ、急速充電網を開放~EV普及の節目となるか
-
2024年4月15日 アメリカ発ニュース, 米国ビジネス, 自動車関連
EV生産コスト、27年にはガソリン車より安く~ガートナーが予想
-
人間の労働力の方が人工知能より安価 〜 MITの研究、雇用機会の大部分は人工知能にまだ奪われないと結論
-
ドローン配送に現実味~運用範囲広がる