機械学習が法務の仕事に変革をもたらす 〜人に代わって書類精査や離婚協議を自動化

 医療診断や製薬といった医療分野をはじめ、人工知能の業務活用に注力する業界は増えている。
 
 フォーブス誌によると、一般に法曹界では先進技術の導入に消極的だが、昨今、事情は変わり始めており、法律事務所や法務部、新興の法律サービスによる人工知能応用が活発化しつつある。
 
 ▽重要箇所や関連書類を特定
 
 人工知能を基盤としたソフトウェアは書類中の重要箇所をまず特定し、機械学習アルゴリズム群がそれらの重要箇所の内容を認識して、関連性のあるほかの書類を見つけ出し、必要書類のすべてを短時間でそろえる。
 
 その結果、これまで補佐役らが何時間または何日もかけて読むしかなかった書類を短時間で処理できる。また、補佐役や弁護士らは、機械学習が特定した書類だけを精査するだけで済むため、より重要なほかの仕事に時間と労力を割くことができる。同分野では、サンフランシスコ新興企業のロス・インテリジェンス(ROSS Intelligence)が法務向け自然言語処理人工知能ソフトウェアを開発し、成長中だ。
 
 ▽契約内容の問題点を指摘
 
 法律事務所の主要業務の一つに、顧客に代わって契約内容を精査して危険要因や問題点の有無を特定し、顧客に有利になるよう契約内容を修正するという仕事がある。
 
 昨今では、同分野にも人工知能が応用されるようになってきた。人工知能は、機械学習で学んだ判断材料をもとに多くの契約書の内容を高速で精査でき、弁護士はその結果を最終確認するだけで済む。
 
 同分野では、キラ・システムズ(Kira Systems)やローギークス(LawGeex)、イーブリヴィア(eBrevia)といった新興企業が契約内容精査ツール群を法律事務所に提供している。
 
 ▽データ解析で結果を予想
 
 データ解析人工知能は、法的手続きの結果を人間より正確に予想する。
 
 たとえば、「もし訴訟になった場合、勝てる可能性はどれくらいか」や「訴訟をせずに和解すべきか」というのは依頼人が弁護士によく聞く質問の典型で、答えは弁護士によって異なる。
 
 人工知能は、何年にもおよぶ過去の訴訟データにアクセスしてそれらの内容を学習し、当該案件と類似する数々の事例を特定して、その結果から当該案件に関する「もし」の場合に応じた確からしさを予想する。
 
 一部の調べでは、弁護士より高い確率で予想できるという結果が出ている。
 
 ▽オンライン・ソリューションで協議離婚費用を超低コストに
 
 米国では、典型的な協議離婚の成立には約1年かそれ以上の時間と、2万7000ドルの弁護士費用がかかる。
 
 新興企業のウィヴォース(Wevorce)では、離婚したい夫婦が自身で和解できるようにするオンライン離婚ソリューションを低価格で提供することで、弁護士費用の高額さという課題を解消している。
 
 当該夫婦が同ソリューションを使って「最善の結果」をまず定義すると、人工知能が当該夫婦を5つのモジュールに誘導し、それぞれの状況に応じて重要な意思決定をくだす手助けをする。
 
 同ソリューションではまた、ソフトウェアだけではらちがあかない場合に離婚の法律専門家が割り込んで助言し、和解を成立させる。
 
 ▽人工知能に対応できる新人材の確保が必要に
 
 デロイトによると、2023年までに約10万の法的業務が自動化されると予想される。
 
 また、法律事務所は2020年までに、人工知能による法務処理の普及を受けた人材戦略の転換点に直面する、とデロイトは予想する。従来の人材採用では、人工知能時代の法務処理に対応できないため、人工知能に対応できる新たな人材を確保しなければ競争に負けることになる。
 
 法律事務所によって起業された米国初の法務向け技術開発新興企業のネクストロー・ラブズ(NextLaw Labs)では、人工知能による過ちをおそれずに人工知能によって処理する法務サービスに特化した事業を開発する方針を掲げている。
 
 【https://www.forbes.com/sites/bernardmarr/2018/05/23/how-ai-and-machine-learning-are-transforming-law-firms-and-the-legal-sector/#37f74cc932c3】(U.S. Frontline News, Inc.社提供)

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