電気自動車(EV)メーカーのテスラは、数カ月前から同社初の量産型EV「モデル3」の本格生産を開始し、長く待たされたたくさんの予約客はようやく車を入手できるようになった。ところがテスラには、納車、サービス、需給バランスといった新しいロジスティック問題が持ち上がっている。
■部品調達に数週間
ウォールストリート・ジャーナルによると、2018年8月に「モデル3」を受け取ったというフロリダ州の男性は、乗り始めて6週間後に軽い事故でバンパーが傷ついたため修理に出したが、スペア部品が来るまでに3カ月もかかったという。
テスラのイーロン・マスクCEOは、最近の電話会見で一部の問題を認め「今四半期の最優先課題はサービスの改善」と語った。同社は今年、現在は4万2900ドルで販売している「モデル3」の価格を大方の消費者が購入しやすいよう、従来の約束通り3万5000ドルまで引き下げる予定で、今後は特に流通面の調整が重要になる。
塗装であれ窓ガラスのひび割れであれ、今はテスラ車の修理に非常に時間がかかっており、顧客はソーシャルメディアでその不満をぶちまけている。サンノゼに住む男性(33)の場合、18年9月に事故に遭った「モデル3」の修理がまだ済んでいない。数週間前にテスラのコールセンターに連絡したところ「テスラは今、新車生産に重点を置いている」と言われたといい、「客への愛着がまったく感じられない」と憤っている。
修理工場の関係者からも、テスラはほかの自動車メーカーより部品入手に数週間長くかかることが多いとの指摘がある。これに対しテスラは、車の修理時間は部品の数や在庫状況、それを届ける流通面など多くの要因が影響し、必要な部品の到着にいつも数週間かかると考えるのは不正確だと反論。部品が必要になる時期や、どうやって速く供給するかを予想するモデルを開発しているほか、社外の修理工場の質を確認する専門部署も立ち上げたという。
■ディーラーを持たない弱み
テスラの問題の1つは、他の自動車メーカーと違って車の販売やサービスを提供するフランチャイズ・ディーラーシップ・ネットワークを持たないという点にある。同社は長年これを強みと主張し、顧客体験向上のための管理がしやすいと説明してきたが、これはサービスセンターやその要員補充にも支出が発生するということだ。同社は全米に85のサービスセンターを置き、「モデル3」の発売に備え、施設で場所を取らないように出張修理専門チームにも投資した。修理の80%はサービスセンター外でできると予想し、19年は出張修理用の車両も24%増やす予定だ。
マスク氏は1月、モバイル・リペア・サービスの改善計画を発表。テスラ車の車載センサーがパンクやその他の問題を検出すると、すぐに車が修理要員と代車を要求できるようにする予定で、同氏は「顧客の幸福度を大幅に改善できる」と話した。
事故車に関しては、カリフォルニア州に2カ所の修理センターと軽い衝突事故を修理できる9カ所の施設があり、それ以外は全米の認定修理工場に依頼している。マスク氏によると、部品の調達が遅れているのは、同社が部品を各サービスセンターではなく配送用の倉庫に保管するという間違ったやり方をしたためで、今後は修理業務の社内対応も増やす意向だという。 (U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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