工場やオフィスの自動化によって、2030年までに1億人以上の女性が転職を強いられる可能性があるという調査結果を、マッキンゼー・グローバル・インスティチュートが発表した。
■事務系は高リスク
ウォールストリート・ジャーナルによると、米国、中国、インドを含む世界の10大経済を調査したマッキンゼーは報告書で、技術の進歩は男女ほぼ均等に影響が及ぶと結論づけた。従来の「自動化で最大の影響を受けるのは製造業の男性労働者」という概念を覆す内容となってている。
報告書作成者の1人、メカラ・クリシュナン氏によると、新しい自動化の波は製造業やロボットにとどまらず、アマゾンの「アレクサ」のような事務的作業を引き受ける音声サービス、レジ(金銭登録機)のない清算システムの拡大、コールセンターの顧客サービス係に代わる人工知能(AI)といった形で表れる可能性がある。
このため、工場へのロボットアーム導入で過去数十年にわたって製造業の男性労働者が負の影響を受けたように、女性の仕事も変わる可能性がある。クリシュナン氏は「自動化が何らかの役割を果たす業界や職業は非常に幅広く、女性も男性と同様に影響を受ける」と指摘した。
特に秘書や日程調整係、簿記係のような事務系の業務はリスクが高く、先進国ではこうした仕事の72%を女性が受け持っている。小売りや食品サービスなども例外ではなく、ここでも多くの女性が働いている。マッキンゼー調査では、自動化の影響を受ける恐れがある女性雇用は全体の20%に相当する1億700万人で、男性の21%とほぼ同等となっている。
■新種の雇用も
ただし報告書は、自動化による大量失職を見込んでいる訳ではなく、30年までには1億7100万人の女性が就業する新しい仕事が生まれ、雇用増加率は男性より女性の方が少し高くなる可能性もあると予想している。これは主に、現在急成長するヘルスケア分野の雇用の大半を女性が占めていることによる。
報告書はまた、危機にさらされるのは主にフルタイム職で、多くの業務が部分的に自動化されると指摘した。看護師の場合、スマート健康診断機や音声認識技術の向上で将来はデータ入力に費やす時間が減ると考えられるという。自動化で危機に直面する業務の割合は先進国ほど高く、米国では女性雇用の24%、男性の26%に上る。
一方、女性政策研究所(IWPR)の最新調査によると、女性は米労働力の47%を占めるが、自動化が及ぼすリスクが最も高い分野では58%に達する。また、多くの女性は、今後10年に創出される新しい仕事に就くためスキルを身に付けて転職する必要があるが、必要なスキルの取得では女性にはいくつかの壁があり、男性より不利になる恐れがあるという。
女性が直面する壁の1つは、育児など無給のケア作業や家事を担当する割合が高くて必要な教育を受ける時間が少ないこと。また、仕事のための転居が男性より困難、科学・数学・工学部出身者が少ない、特に経済新興国ではテクノロジーへのアクセスが少ない…といった問題もある。 (U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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