【ニューヨーク不動産最前線】
アパートのアメニティ

アパートビルのオーナーは、テナントを引きつけるためにあらゆるアメニティを建物内に揃えてきました。フィットネスジムやプールはもちろんのこと、ゴルフコースのシミュレーター付き練習場やフルサイズのバスケットボールコート、スカッシュコート、ボルダリング練習場等のアスレチック系、さらにシアタールームや図書室、屋上ラウンジやバーベキューエリア。ある意味アメニティのバブル状態です。特に駅から遠いビルや立地の良くないビルほど、このようなアメニティは充実していました。

しかし、このようなアメニティ施設はCOVID19が始まって以降閉鎖されています。ほとんどのビルでまだ再開されていないか、再開しているところでも利用者の人数制限をしています。そこで代わりにオーナーが取り入れ始めたのが、オンサイトのヘルスケアサービスです。

ビルオーナーが民間のヘルスケア産業(Sollis)とコラボして、テナントにヘルスケアサービスを提供するというものです。閉鎖しているテナント専用ラウンジやジムのスペースを使って、COVID19の抗体検査を始めているところがあります。少なくとも週1で看護師がビルにやって来て、検査をしてくれます。基本的にアポイント制ですが、ウォークインでも大丈夫で、なんと結果は24時間以内に分かります。この検査はテナントでいる限り何度でも受けられます。

実は私もレンタルビルが医療機関とのコラボを始めたということで、具体的に何をやるのか少し調べてみました。それで今回初めて知ったのですが、Sollisというのは独立系の会員制総合病院のようなところで、2016年にニューヨークでサービスを始めた会員制プライベート医療機関のようです。年会費が3000〜5000ドルかかりますが、24/7でサービスを受けられ、あらゆる分野の診察をカバーしており、待ち時間や別途アポイントを取る必要もなくその場でレントゲンやMRIといった検査まで受けられるようです。ERよりも早く的確な処置を受けられるというのが謳い文句のようです(参照:https://sollishealth.com/)。

話が逸れましたが、とにかくこの高額な年会費をビルがカバーしてくれるというので、アメニティとしては価値があるのではないでしょうか(注:実際の治療費はテナント負担。テナントが各自加入している保険は適用されます)。今後、このようなサービスを取り入れるビルが増えるのか、それともコロナ禍が終息するにしたがって消えていくアメニティなのか分かりませんが、バブリーな施設に代わるニューヨークの賃貸業界の新しいトレンドになるかもしれません。

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柏原知子 (Tomoko Kashihara)

柏原知子 (Tomoko Kashihara)

ライタープロフィール

大阪女子大学(現:大阪府立大学)卒業後、CBRE Japanに入社。東京で外資系企業のオフィス移転を担当する商業不動産ブローカーとして働いた後、ニューヨーク勤務を機に住宅ブローカーに転向。1999年より住友不動産販売NYで活躍した後、2021年に米系大手Compassに移籍。趣味は旅行、クルーズ、トレッキングとイタリア語。

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