新型コロナウイルスのパンデミックが始まって以来、サプライチェーン(供給網)の混乱が小売り大手を悩ませているが、売り時を過ぎて届いた大量のブランド品は、ディスカウント衣料品店にとって思わぬ恩恵になっている。
■仕入れの絶好機
ウォールストリート・ジャーナルによると、小売り大手が米国の港に山積みとなった注文品の始末に苦労する一方で、バーリントン・ストアズやロス・ストアズといった安売り店の仕入れ担当者は、衣料品を中心とする季節外れの商品を大手から安く購入している。
ロス・ストアズのバーバラ・レントラーCEOは3月1日の決算発表で「特定の販売シーズン向けに用意された衣料品の在庫を含め、サプライチェーンの変動性を活用できた」と語った。「見切り品の売り上げはまだ期待できる」「ブランド店は今もたくさんの商品を動かしており、まだ国内に届いていない可能性もある」とも述べた。
大手ブランドは、過剰在庫、特に販売時期を過ぎた衣料品が出るとTJマックスやマーシャルズのような安売りチェーンに放出したり、大幅に値下げしてアウトレット店に出すのが一般的で、安売り店にとっては絶好の仕入れ時となる。
■輸送に大きな遅れ
ロサンゼルスやロングビーチ港などの主要な貿易港では、パンデミックの間、在庫の補充を急ぐ小売業者の増加などで大きな配達の遅れが生じた。3月に入って南カリフォルニアの港で荷下ろしを待つ船の数は減ったが、ほかの港ではあちこちで遅れが出ている。
貨物輸送業者フレックスポート(Flexport、サンフランシスコ拠点)は最近、アジアから西海岸経由で国内の目的地にコンテナを運ぶには100日以上かかるとの推定を発表しており、2年前の50日未満から大幅に伸びている。
多くの小売業者は注文を前倒しし、大手はボトルネック(局所渋滞)を避けるために船をチャーターしているが、遅れで春物商品が売り時までに届かない恐れがある。衣料品販売ギャップのソニア・シンガルCEOは最近の決算発表で、西海岸の港の停滞と昨年のベトナム工場の閉鎖により、季節商品で8~10週間の遅延が生じたと報告。同業のエクスプレスも、出荷の遅れを受け、来秋にアウトレット店で販売する在庫が1200万ドル相当に上っていると話した。
■影響は安売り店にも
流通のボトルネックは、安売り業者自身の仕入れにも影響を及ぼしている。ロス・ストアズは、配達のリードタイムが長くなり、輸送中の商品が増えたため前四半期は在庫が急増した。年間在庫は22億6000万ドルに上り、2年前の18億3000万ドルから23%増えたという。バーリントンも2021年10~12月期に出荷が遅れ、年間在庫は2年前の7億7700万ドルから10億2000万ドルに増加している。
一方で、輸送の問題は小売業界全体に広がっているため、ディスカウント店にとっては非常に強力な購買環境が生まれている。小売業者の売上高在庫比率は最近上昇しており、備蓄が増えていることを示しているが、歴史的にはまだ低水準で、安売り店のサプライチェーンにより多くのブランド品が流れ込むという見通しを弱めるほどではない。
(U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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