リスティング、
誰のためのルール?

文・柏原知子

前回の記事にも関連することですが、皆さんは物件を探す時、どうやって探しますか?

NYCでは、結果的に90%近いバイヤーがエージェントを通じて購入していると言われています。ただ、「ちょっとマーケットを見てみたい」という段階では、わざわざエージェントに連絡するより、まずウェブで検索する方が便利ですよね。

NYCで最も利用されている不動産検索サイトの一つがStreetEasyです。では、StreetEasyにはすべての物件が掲載されているのでしょうか?

実は、そうとは限りません。面白いのは、ほぼすべてのバイヤーが最終的にはエージェントを利用するため、StreetEasyなどの物件検索サイトに掲載されていない物件でも、エージェントを通じて知ることができるということです。なぜこのようなことになるのかを、今回は「プライベート・リスティング」という選択肢を通じてお伝えします。

最近、NYCの不動産業界で大きな話題になっているのが「プライベート・リスティング」です。

通常は、物件をパブリックにして、MLSや物件検索サイトなどを通じて広くバイヤーに知らせます。しかし、すべてのセラーが最初から物件を一般公開したいとは限りません。

例えば、プライバシーを重視するセラー、著名人、まだテナントが住んでいる物件、内覧を限定したい場合、また一般公開する前にマーケットの反応や価格感を確認したい場合など、プライベート・リスティングにはそれぞれの事情があります。

私自身、Compassのエージェントとして仕事をしていますが、少なくとも私が経験しているCompassのプライベート・リスティングは、「Compassの中だけで売る」ことが目的ではなく、セラーが、いつ、どのような方法で物件をマーケットに出すかを選択できるようにするための仕組みという意味合いが強いと思います。

さらに、一度パブリック・リスティングにすると、物件がマーケットに出た日や、何日間売れていないかという情報もバイヤーから見えるようになります。60日、90日と売れない状態が続けば、「何か問題があるのでは?」「セラーは焦っているのでは?」といった推測をされることもあります。もちろん、それが事実とは限りませんが、Days on Marketという数字が一人歩きすることで、セラーにとって思わぬ負担になることがあります。

逆に、バイヤーの立場からすると、マーケットに出ている物件をもれなく知りたい、と思うのは当然です。そこで、現在、StreetEasyは、最初にプライベートとしてマーケティングした物件を、後からStreetEasyに掲載することに制限を設ける方向に動いています。つまり、セラーが最初は「プライベートでマーケティングしたい」と希望し、その後、「もうパブリックにして構いません。より多くのバイヤーに見てもらいましょう」と判断したとしても、StreetEasyには載せられなくなるのです。

私はここに疑問を感じます。プライベートにすることもセラーの意思。後からパブリックにすることもセラーの意思です。最初にプライベートを選んだことを理由に、その後パブリックにする際の選択肢まで制限するのは、果たして誰のためなのでしょうか。

もちろん、StreetEasyからすれば、できるだけ多くの物件をパブリックに掲載することで、バイヤーがマーケットを幅広く見られるようにしたいという考え方があります。一方、セラーには、自分の物件をいつ、どこまで、どのように公開するかを決める権利もあるのではないでしょうか。

バイヤーにとってのマーケットの透明性と、セラーにとっての選択権。どちらをどこまで尊重すべきなのか。これは、これからのNYC不動産マーケットを考える上で、セラーやバイヤーの皆さんにも関係する問題だと思います。皆さんは、どう考えますか?

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柏原知子 (Tomoko Kashihara)

柏原知子 (Tomoko Kashihara)

ライタープロフィール

大阪女子大学(現:大阪府立大学)卒業後、CBRE Japanに入社。東京で外資系企業のオフィス移転を担当する商業不動産ブローカーとして働いた後、ニューヨーク勤務を機に住宅ブローカーに転向。1999年より住友不動産販売NYで活躍した後、2021年に米系大手Compassに移籍。趣味は旅行、クルーズ、トレッキングとイタリア語。

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