デジタル時代にも鉛筆が活躍〜ファーバーカステルは業績好調

デジタル革命で鉛筆の需要はなくなるかに見えたが、創業256年になるドイツの鉛筆メーカー、ファーバーカステル(Faber-Castell)は今も繁栄を続けている。

ロイター通信によると、ダニエル・ロガーCEOは「デジタル機器に囲まれた人々が、手作業による自己表現に戻っている。製品の使われ方という意味でデジタル化への抵抗のようなもの」と話す。

最近は大人用塗り絵の人気で色鉛筆の需要が高く、ファーバーカステルの2016-17年度売上高は過去最高の6億6700万ユーロとなった。流行は一段落したものの、今度は日課表と芸術的落書きを組み合わせたような「ブレット・ジャーナ ル」と呼ばれる新しいトレンドの登場で、17-18年度も売り上げは堅調を維持している。

インターネット上にデジタル・ギャラリー開設するなど、同社はデジタル技術を積極的に活用しており、重要市場の1つであるブラジルでは17年、アーティスト同士が作品や創造的なアイデアを共有できるプラットフォームを立ち上げた。 また、ドイツ・シュタインにあるファーバーカステル・アカデミーをモデルに、日本とレバノンに美術学校を設立している。

ファーバーカステルは本拠地のドイツ・ニュルンベルクで年間1億5000万本の色鉛筆を生産し、ブラジルではより大きな工場で年間20億本以上を生産している。9代目となる創業者一族はこれまで何度も企業存続の危機に陥り、工場を見下ろす城は、一時はナチスに、さらには米軍に徴収され、連合国側が戦争犯罪を裁いたニュルンベルク裁判の報道関係者用宿泊所に使われた。1970年代に電子計算機が登場すると、同社の副業だった計算尺事業を短期間で消滅させた。

17年に創業者一族以外では初めてファーバーカステルのCEOに就任したロガー氏は、高級時計業界で経験を積んだスイス人。デジタル時代やソーシャル・メディアは同社にとってチャンスだと言い、「顧客や消費者との距離が縮まり、商品やトレンドに関する直接の反響が得られる」と話している。

ファーバーカステルの商品はアメリカ国内いたるところで購入できる。 (U.S. Frontline News, Inc.社提供)

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