海外から日本の不動産を売買する際の手続と注意事項 ~【後編】売却時

文/蓑田透(Text by Toru Minoda)

前回に続き、海外居住者が知っておきたい日本の不動産売買手続きについて紹介したいと思います。今回は売却時についてです。

前回コラムでは、海外居住者でも外国籍でも日本の不動産を購入することができると説明致しましたが、もちろん同様に売却することもできます。海外居住者が日本に不動産を保有しているケースは主に「日本で住んでいた時に購入した」または「日本の親が亡くなり実家を相続した」というケースが多いと思います。

当コラムでは以前に親の実家の処分について下記通り紹介しています。ご興味あれば合わせてお読みください。
※2025年3月6日公開:なるほど!海外居住者が行う日本の親の相続手続~③不動産(実家の家)の取扱い(相続登記、処分)

1.売却方法

一般的には対象不動産のある地域の不動産仲介業者(以下「仲介業者」)へ販売を委託するのが一般的です。インターネットを使い仲介業者を介さずに直接買い手を見つけて売却する方法もありますが、専門知識も必要ですし何といっても海外にいながらのやりとりだけでは限界がありリスクも伴います。

仲介業者へ売却を依頼するとまず不動産媒介契約を締結します。その後不動産流通機構が運営する「レインズ」というシステムに売却中物件として登録されます。売却を委託する仲介業者は1社限定でもよいし、複数業者に委託することもできます。前者であればその業者が責任をもって担当してくれるし、後者であればより広い範囲で買主を見つけてくれるかもしれません。1社のみと締結する場合を「専属専任媒介契約」「専任媒介契約」(※1)、複数社と締結する場合を「一般媒介契約」といいます。

2.売却手続きの流れ

以下の流れで売却手続きを進めるのが一般的です。③以降の手続きについては仲介業者がアドバイスしながら手続きを進めてくれます。

①準備活動と相場価格のチェック
まずは売却できるよう不要な家財などは処分し、必要なら建物内外を清掃するなど査定額を高くするための準備を行います。

②査定の依頼
候補となる仲介業者を選び不動産の査定してもらいます。査定に際しては担当者が現地を訪問し土地、建物や周辺の状況などを十分にチェックするのが一般的です。なるべく複数社に依頼し査定額の高い業者を見つけるのが良いでしょう。

③不動産会社と媒介契約の締結
正式に売却を委託する仲介業者が決まったら、前述の不動産媒介契約を締結します。

④仲介業者による売却活動
査定額を参考にして最初の販売希望価格を決定します。安い金額であればそれだけ早く売れる可能性が高くなりますが、時間的余裕があれば最初は少し高めに設定してもよいでしょう。時間が経過しても買い手が見つからない場合は仲介業者と相談して販売額を下げていきます。

⑤売買契約
買い手が見つかり仲介業者を通じて各条件の合意がとれたら売買契約を締結します。具体的には売買契約書、重要事項説明書に署名、押印します。合意後物件の引き渡しに時間がかかる場合は仮契約をした上で手付金を受け取ります。例えば相続した親の実家など、古い物件については建物を撤去し更地にしてから住宅販売会社へ売却するというケースもあります。その場合まずは仮契約で手付金を受領し、後日更地となって引渡し可能となった時点で本契約となります。

⑥引渡しと売却代金の受領
売買契約書の締結と同時に物件の引き渡し(建物の鍵や登記識別情報の提供)と、残金の受領を行います。残金の受取と言ってもまとまった額のため現金での受領は通常行いません。銀行口座への振込ということになるので、オンラインですぐに受領確認できるようネットバンキングへの登録をお勧めします。(3.注意事項「銀行口座と売却代金受取時の外国送金」参照)

3.海外居住者が知っておきたい注意事項

諸経費

不動産の売却手続きに際しては、下記の費用が発生します。印紙税、不動産仲介業者への手数料がかかります。親からの相続物件で相続登記が終わっていない場合(名義が親のままの状態)、一旦自分への名義変更を行う必要があるため司法書士業者への手数料も発生します。

税金

海外居住者(非居住者)が日本の不動産を売却する場合日本側で下記の税金が発生します。

  • 売却時に税率10.21%の源泉徴収が義務付けられています(例外あり※2)。ただしこれは買主の義務と決められているため(つまり買主が立て替えて納付するため)売却代金から差し引かれることになります。
  • この売却による不動産譲渡所得に対し、翌年の確定申告および納税が必要となります。時間が空いてしまうので忘れないよう注意しましょう。またその際、前述の源泉徴収が発生した場合はこの分を差し引くことが(または還付)できます。したがい申告手続する場合は税理士などの専門家に相談することをお勧めします。(※3)

提出書類

購入時と同様高額の金銭を伴う契約のため、売買契約、不動産登記手続きとも本人確認書類として印鑑証明(実印+印鑑証明書)、住民票の提示が求められます。しかし海外居住者の場合はこれらがないため、代わりの書類提出が必要です。具体的には日本国籍では日本大使館/領事館のサイン証明書、在留証明書、外国籍の場合はNotary(公証人)が発行・認証するサイン証明書、居住証明書になります。

銀行口座と売却代金受取時の外国送金

買主からの売却代金の受領は原則銀行振込となります。以前日本で開設した口座や非居住者口座を保有していれば(海外居住者は原則銀行口座を保有することはできません)受取可能ですが、日本に口座がなければ親族や代理人など第三者の口座経由で受け取ることになります。買主から直接売主の海外口座へ外国送金することはないと考えた方がよいでしょう。また日本国内の自分の口座または第三者の口座から海外の自分の口座へ外国送金する場合、金融機関ではその目的やお金の入手経緯など細かくチェックされますので、売買契約書やその他書類の提示が求められます。

(備考)
※1 「専属専任媒介契約」の場合、自分で買主を見つけた場合でも直接売却できません。一方仲介業者からの活動報告の回数が多いです。
※2 次の要件すべてを満たす場合は、源泉徴収は免除されます。
  ・売買代金が1億円以下
  ・買主が自己または親族の居住用として不動産を購入した
  ・買主が個人
※3 日本の確定申告は翌年2月15日~3月15日です。(休日の場合は前後します)

[本コラムの英訳版/English translated version of this Column]
http://www.life-mates.jp/Eng_Column14

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蓑田透 (Minoda Toru)

蓑田透 (Minoda Toru)

ライタープロフィール

早稲田大学理工学部卒業後、総合商社入社。その後子会社、外資系企業等IT業界で開発、営業、コンサルティング業務に従事。格差社会による低所得層の増加や高齢化社会における社会保障の必要性、および国際化による海外在住者向け生活サポートの必要性を強く予感し現職を開業。米国をはじめとする海外在住の日本人の年金記録調査、相談、各種手続きの代行サービスを多数手がける。またファイナンシャルプランナー、米国税理士、宅建士、相続診断士、日本帰国コンサルタントとして老後の日本帰国に向けた支援事業(在留資格、帰化申請、介護付き老人ホーム探し、ライフプラン作成、不動産管理、就労・起業、税務等の相談・代行)や、海外在住者の日本国内における各種代行、支援サービス(各種証明書の取得、介護・葬儀・相続など日本在住の老親のサポート)を行う。

●豊富な実績に基づくていねいなサポートで
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