EV電池合弁事業〜業界にとっての吉兆

 2020年までにボッシュとGSユアサは現在の電池より倍のエネルギー容量を持つリチウムイオン電池を発売する計画だ。電気自動車(EV)は1回の充電につき400km走行可能となり、さらに電池の重量と費用も抑えることができる。今年6月、ボッシュ、三菱商事、GSユアサは、プラグイン式ハイブリッド車(PHEV)もしくはEVに使われる電池の研究開発目的に、ドイツ、シュツットガルトで合弁会社を立ち上げた。ボッシュが合弁会社の50%を保持し、GSユアサと三菱は残りの25%ずつを保持する。

 電池に投資するという経営判断は、EVの高まる需要に支えられている。ボッシュの世界自動車ビジネス部門の責任者であるシャイダーは、東京モーターショーで「2020年までに1200万台の自動車が電化されると予測している」と語った。ボッシュがアジアの企業と手を組んで電池事業の合弁事業を立ち上げるのは、今回で二度目の挑戦だ。2008年、韓国の電池メーカー、サムソンSDIと合弁会社を立ち上げたが、今年9月、ボッシュは9500万ドルで合併企業のSBリモーティブの50%分の持ち株を売却、関係には終止符が打たれた。かわりに、ボッシュは、SBリモーティブの米国とドイツの子会社を3800万ドルで買収した。ボッシュとサムソンは、どの市場に向けて何の製品を供給するかについて見解を統一できなかった。また、両社は、共同事業を商用車市場で展開するか、中国で展開するかについての意見も異なっていた。リチウムイオン電池に関するサムソンの専門知識、自動車に関するボッシュの総合的な技術をもってすれば、両社のジョイントベンチャーはリチウムイオン電池のサプライヤーとして世界トップをめざせたはずだった。

 今回の合弁事業に関しては、ボッシュはセルのモニターと調整、電池システムの統合を担当し、GSユアサは高密度のエネルギーのリチウムイオン電池セルの製造を担う。そして、三菱商事は世界市場のネットワークを生かしたマーケティングを担当する。この大企業3社によって、今回の合弁事業は、EV電池を安価に量産するのに必要な資金、研究開発の能力、製造設備のすべてにおいて有利なはずだ。実際の製造は2018年に開始されるが、同様の合弁事業が高品質なEV電池の開発を加速化させ、量産するまでには長い年月がかかるだろう。シャイダーによれば、現時点でまだ売上目標や、予定されている1200万ドルの売上をどのように配分するかは定められていない。「我々の現時点での目的は開発だ」とシャイダーは言う。電池にかかる高い費用と限られた生産能力がハイブリッド自動車とEVの市場浸透を阻む大きな障壁であり、まずは研究開発に全力を注ぐことが重要なのだ。

 ボッシュは、技術開発に年間5億4330万ドルの投資をしている。他社との提携は、ボッシュにとって投資費用の低減につながる。専門家は、電池にかかる費用は将来的、低くなるだろうと予測しているが、かなり先のことだとも言われている。それまでは、技術に注ぐ投資は絶対不可欠である。

 一方、ダイムラーとエボニックは、多額の損失を出している合弁会社リテック(Li-Tec)への何らかの対処を検討中だ。ダイムラーはスマートカーの電気自動車バージョンに同合弁会社のリチウムイオン電池を使用している。両社は、他社との提携で、より多くの自動車メーカーに合弁事業の生産物を販売できるはずだと信じている。

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