ペロブスカイトは未来の太陽電池か 〜 近年の急速な変換率向上で期待と注目
- 2014年6月16日
- 環境ビジネス
太陽光発電の変換効率を高める安価な素材として、ペロブスカイト(perovskite)が注目されるようになっている。
クリーンテクニカ誌によると、ペロブスカイトを使った太陽電池の変換効率は、2009年の3.8%から2014年5月時点で19.3%にまで向上した。これほどの急向上はかつて例がなく、その有望さをうかがわせている。
現在の薄膜技術の変換効率は、テルル化カドミウムを使ったものが20.4%、CIGS(銅、 インジウム、ガリウム、セレンの化合物)を使ったものが20.8%だが、ペロブスカイトはそれらを近く上回ると期待される。市場の主流となっている多結晶シリコン太陽電池は25%だが、ペロブスカイトはそれに近づくと予想され、しかも、コストははるかに安い。
ペロブスカイトへの期待感は広まっており、専門誌『サイエンス』は2013年の「ブレイクスルー・オブ・ザ・イヤー」の2位にペロブスカイトを選んだ。また『ネイチャー』誌は、2014年の注目素材として記事を載せている。
ペロブスカイトは、ロシアの鉱物学者レブ・ペロブスキ氏にちなんで名付けられた。灰チタン石とも呼ばれ、単体の素材ではなく、チタン酸カルシウム(CaTiO3)の結晶構造の一種だ。
ペロブスカイト構造は一般に、微細の炭素(有機)分子、鉛などの金属、そしてヨウ化物、臭化物、塩化物といったハロゲン化物の3元系で構成される。
ペロブスカイトは1990年代に広く研究されたが、太陽電池の素材として見出されたのは2009年のことだ。桐蔭横浜大学の研究者が液体電解質を用いた色素増感型太陽電池で使用したが、液体電解質はペロブスカイトを溶解したため、安定性を達成することができなかった。
2012年になってオックスフォード大学、スイス連邦工科大学ローザンヌ校、さらに韓国の成均館大学校の研究者が同時に研究に取り組み、液体電解質を固体電解質に置き換えたことで、効率が大幅に向上した。
ただ、実用化と普及に向けては、解消されるべき課題が山積している。まず、モジュールとして組み立てて、屋外にさらされる環境で20〜30年の耐久性があるかどうかを見極めなければならない。
ペロブスカイトは水分にきわめて敏感なため、完ぺきに密封して外気を遮断する必要がある。現時点では安定性の持続期間に関するデータが不十分だが、研究室での試験は続けられており、太陽光の模擬実験で1000時間以上という実績はある。また、鉛の存在も対応が求められる要因となるかもしれない。
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