米企業、節税狙い本社を海外へ〜「インバージョン」は30年で76社

 1983年以降、76の米企業が税金対策として課税の基準となる本社の所在地を国外に移したことが、議会調査局(CRS)の調べで分かった。

 ロイター通信によると、「インバージョン」と呼ばれるこうした動きは近年になって急増しており、過去10年では47件に上っている。現在進行中の例もあり、医療機器大手メドトロニック(ミネソタ州)はこの6月、課税率の低いアイルランドの同業コビディエンの買収計画を発表したが、これは節税も理由ではないかと見られている。

 CRS報告書によると、この10年はマリンクロット・ファーマスーティカルズ(Mallinckrodt Pharmaceuticals)、ペリゴ(Perrigo)、アクタビス(Actavis)といった製薬会社もインバージョンを行っており、その多くはアイルランドに本社を移した。

 一方、国際法律事務所カドワラダー・ウィッカーシャム&タフトの幹部は6月、ダブリンでアイルランドのエンダ・ケニー首相と米企業による同国へのインバージョンについて話し合った。同事務所は「多国籍企業が行う大胆な節税計画によって、アイルランドの税制はEUの厳しい監視を受けるようになっている」との声明を発表した。

  「真ちゅうメッキ取引」とも言われるインバージョンは、本社の所在地が変わるだけで、移転先の国の雇用増や経済発展にはほとんど貢献しない。カドワラダーは「アイルランドで会社設立を計画する米国などの多国籍企業は、相手国との有意義な関係構築に目を向けることが重要」と指摘する。

 近年は英国、オランダ、スイスも米企業によるインバージョンの目的地になっている。 米国の課税対象が減少することを懸念して、連邦議会ではインバージョンを制限する法案が提出されているほか、オバマ政権もインバージョン規制の提案を行っているが、年内に法制化される可能性は低いと見られている。

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