探鉱支出を大幅削減〜石油業界、将来の供給懸念も

 石油業界では、原油価格の低下を受けて、小さな探鉱会社が探鉱契約の再交渉、探鉱権の売却、試掘計画の中止といった形で大規模なコスト削減を実施しており、将来の供給への影響が懸念されている。

 ウォールストリート・ジャーナルによると、コスト削減の動きは業界全体に広がっているが、小回りの利く小さな試掘会社は、リスクの高い地域にもいち早く進出して新たな可能性を探り、大きな鉱床を見つけると大手と提携して開発に着手することが多く、業界では重要な役割を果たしている。

 今年英蘭メジャーのロイヤル・ダッチ・シェルに約700億ドルで買収された英BGグループは、早期にブラジルへ進出した。アナダルコ・ペトロリアム(Anadarko Petroleum、テキサス州)は最初にモザンビークに進出し、英オフィア・エナジー(Ophir Energy)も早くからタンザニアに力を注ぎ、ノーブル・エナジー(Noble Energy、テキサス州)はイスラエル沖の天然ガス探鉱に賭けて噴出する油層を探し当てた。

 こうした小さな探鉱会社の動きが鈍ると画期的な発見が減る。元BPの最高経営責任者(CEO)で現在は英ジェネル・エナジー(Genel Energy、)の会長を務めるトニー・ヘイワード氏は、「これほど資金を減らせば将来の供給に支障がでるのは明らか」と見ている。業界コンサルティングのウッドマッケンジーによると、業界はすでに約2000億ドルに上る新しい石油や天然ガス採掘計画を中止または延期しているが、各種予想は昨年700億ドルに上った探鉱支出が今年は平均30%減ると見ている。

 英国のエネルギー・データベース提供会社1デリックは、世界で掘削中または掘削が計画されている試掘井の数は15年に26%減の1004本と過去5年で最低水準になると見ている。

 小さな企業ほど大規模に活動を縮小しており、アフリカに力を入れている英トゥロウ・オイル(Tullow Oil)はすでに探鉱予算を80%減の2億ドルまで削減。今年予定していたモーリタニアの海洋油田掘削計画を中止したほか、1バレル=50ドルの石油価格では採算が取れない計画をなくすため、モーリタニアとナミビアにおける他の探鉱権の売却も進めている。

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