消費者の食の好みが大きく変化する中、業界大手の対応は遅れている。
■4つの流れが同時進行
ウォールストリート・ジャーナルによると、シリアル、スナック、スープ、調味料などを作ってきた伝統的な消費者向け食品会社は、販促戦略の失敗や生鮮食品および新ブランドを好む消費者の増加を背景に一般家庭の台所から遠ざかりつつあり、この1年で株価を3分の1以上落としたところもある。ニールセン調査によると、2017年はスーパーマーケットでも加工食品の販売量が前年比1.7%減少し、伸びたのは生肉や青果、ベーカリーだけだった。クレディ・スイスの分析では、上場する食品大手10社の売り上げは過去4年のうち3年で横ばいまたは減少している。
近年、業界では4つの大きな流れが同時進行している。まず、消費者の好みが新鮮な農産物や肉中心となり、炭水化物や砂糖を含む加工食品から離れている。また、デジタル広告やeコマースの拡大で、小さなブランドでも多くの消費者の目にとまるようになった。さらに、惣菜やミールキットなど加工食品ブランドの競争相手が増えている。同時に、アマゾンのほかアルディ(Aldi)やリドル (Lidl)といった欧州系の競合がスーパー業界に参入し、全般的に利益を圧迫している。
クローガーやウォルマートなどは、利益率を上げるためプライベートレーベルへの投資を拡大している。ニールセンによると、18年3月までの1年にブランド商品の売り上げは0.6%の増加にとどまったのに対し、プライベートレーベルの加工食品や家庭用品は4.6%も増加した。
これらの流れの一部は何年も前から続いているが、近年は一層強まり、ほかの流れと一緒になって食品メーカーや販売業者の大きな脅威となっている。差し迫った脅威はeコマースで、乾燥加工食品の販売はすでにオンラインに移行している。ウォルマートやアマゾンなどは、いかに利益を上げつつ新鮮な食料雑貨を提供するかを考えており、クローガーはオンラインの食料品配達最大手である英国のオカド(Ocado)と提携している。
■マック&チーズ戦争
食品業界の課題と成功機会は、箱入りマカロニ&チーズのような古典的定番商品を例に考えると理解しやすい。この市場は何十年間もクラフト・ハインツが支配してきたが、そこにオーガニックが売り物のアニーズ(Annie’s)が登場した。アニーズの商品は14年にゼネラル・ミルズに買収されるまで米食料雑貨店の20%でしか売られていなかったが、今では約80%で販売され、売り上げは倍増した。
ただし、両ブランドとも格段に改良されたストアブランドや、ひよこ豆といったはやりの材料を使う独自ブランドと競合している。また、アマゾンの「プライ ム・パントリー」サービスでは、ホールフーズの「365」ブランドのマック&チー ズを1箱99セント(オーガニック版は1.69ドル)で購入できるが、クラフトの普通商品は1.59ドル、アニーズは2.19ドルで売られており、クラフト・ハインツの売り上げは過去9四半期中6四半期で減少している。
加工食品会社も、他社のブランドを買収して自社の手腕や強みにうまく合致すれば挽回できる可能性がある。また、コナグラは冷凍食品で一部の古いブランドを復活させるのに成功し、業績を大きく伸ばしている。 (U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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