米国の中国製品に対する追加関税発動を受けて、メモリーチップから工作機械に至るアジアのメーカーが生産を中国から他国に移し始めている。
■7月から計画
ロイター通信によると、韓国SKハイニックス、三菱電機、東芝機械、コマツなどは、トランプ政権が知的財産権の侵害を理由に中国製品に制裁関税の第1弾を発動した7月以降、生産拠点の移動の検討に取り掛かり、今になって実行している。大手メーカーの多くは複数の国に施設を持っているため、小規模なら新しく工場を作らなくても別の場所に生産を移して迅速に対応することが可能になっている。
米国は7月、輸入額にして500億ドル相当の中国製品を対象に25%の追加関税を導入。9月24日にはすでに第3弾が発動され、2000億ドル相当の中国製品を対象に10%の関税が上乗せされた。これは2018年末に25%に引き上げられる予定となっている。トランプ政権は、残りの中国からの輸入品すべてに追加関税を課す可能性も表明している。
■移管先は韓国、日本など
コンピューターのメモリーチップを製造するSKハイニックスは、一部のチップ・モジュール生産を中国から韓国に戻す予定で、米国の同業マイクロン・テクノロジーも一部の生産を中国から他のアジアの国に移している。両社は中国でチップのパッケージングとテストを行っている。
SKハイニックスの関係者は「中国で生産したDRAM(dynamic random-access memory)モジュール製品の一部は米国に輸出されており、関税を避けるためその生産を韓国に移す」と説明する。ただし、コンピューターやスマホの生産大国である中国はDRAMチップの最大市場でもあるため、生産のほとんどは影響を受けないという。
東芝機械は10月、車のバンパーなどプラスチック部品の生産に使われる米国向けプラスチック成形機の生産を日本かタイに移す計画。
一方で三菱電機は現在、金属加工に使われる米国向け工作機械の生産を中国・大連から名古屋の工場に移している。
台湾の電子機器受託製造大手、仁宝電脳工業(コンパル)や韓国のLG電子は、米中貿易摩擦がさらに激化した時に備えて代替策を考えている。コンパルは今のところそれほどの影響を受けていないが「代わりにベトナム、メキシコ、ブラジルの施設を使うこともできる」と話す。
空気清浄器などを製造する韓国の医療機器メーカーIMヘルスケアも、状況が悪化すればベトナムか韓国に生産を移すこと を考えている。
■台湾やタイは企業を誘致
一方、一部の国は中国から生産を移すよう積極的に企業に働きかけている。台湾政府は8月、中国への経済依存を軽減するために輸出入先の多様化を図る「サウスバウンド政策」を加速させると発表し、自国企業に対して供給チェーンを東南アジアに移すよう奨励している。台湾政府は米中貿易摩擦を試練であると同時に好機でもあると見ており、輸出市場は中国に依存しているものの、企業が業務を自国に戻すことで雇用の増加が見込めると考えている。
タイも、テクノロジーや投資が中国から離れることによる利点に期待しており、国内に投資を引きつけるため450億ドルのプロジェクトを進めている東部経済回廊(EEC)事務局は8月、約800人の中国企業代表団を連れて東部の産業中心地のツアーを開催した。 (U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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