生成人工知能が登場してから1年あまりがたつなか、世界中の多くの会社の従業員らは、同技術の業務利用に関する勤務先の方針に関係なく、仕事効率化のために同技術を使っている。ベンチャービート誌によると、マイクロソフトは5月8日、子会社であるリンクトインとの初の共同調査結果を含む毎年恒例のワーク・トレンド・インデックスを発表し、勤め人たちの75%が職場で人工知能を使っている、と報告した。
▽経営幹部ら、利点を理解しながらも導入には慎重
マイクロソフト(Microsoft)によると、その数字は、半年前とくらべて30ポイント近くの急増を示すもので、世界中の多くの会社で生成人工知能をはじめとする人工知能技術の利用が加速していることをあらためて明示する。
ワーク・トレンド・インデックス(Work Trend Index)によると、勤務先の方針に関係なく生成人工知能機能を使う従業員らは、「同技術を使うことで時間を節約し創造性を高め、仕事に集中できる」ことが利用動機だと報告している。
その一方で、企業幹部らの79%は、生成人工知能を含む人工知能技術の導入が競争力維持に役立つと回答しながらも、59%は、人工知能が生産性向上を定量化することを懸念し、60%は効果的導入方法がわからないと回答している。
そのため、多くの会社では生成人工知能の業務利用に際して慎重なところも多い。従業員にとっては、経営陣のそういった姿勢が優柔不断に映るため、独自に判断して職場で使っている場合が増えている、とマイクロソフトは指摘する。
▽人工知能の「BYOAI」と「消費者化」
ワーク・トレンド・インデックスでは、職場におけるそういった傾向を、「自分の人工知能を職場に持参(Bring Your Own AI to Work=BYOAI)」と描写する。マイクロソフトによると、BYOAIは特定の世代にかぎったことではなく、幅広い世代と職務にまたがって浸透している。
そういった動きは、消費者間でさきに普及したテキスト・メッセージングやチャットのモバイル・アプリケーションが業務用ツール化された「消費者化(consumerization)」(消費者向けの製品や機能、サービスが職場向けに活用されること)と酷似する。
ワーク・トレンド・インデックスによると、その背景には、仕事の煩雑さや面倒さを軽減したいと考える従業員らの増加がある。68%は仕事のペースと量に苦しんでいると答え、半数近くが燃え尽き感を感じている、と回答している。
たとえば、電子メール受信箱に大量にある未読メッセージを見るだけで大きなストレスを感じる。そのため、それらの内容を生成人工知能によって要約したり、返信文の下書きを生成したりすることで仕事効率を上げ、精神的および時間的負担を軽減しようとする従業員は増える一方だ。
▽多用者ら、1日あたり30分以上を節約
マイクロソフトのサティア・ナデラCEOは、今回のワーク・トレンド・インデックスについて、「あらゆる会社や団体らが人工知能技術を活用することで、より良い意思決定や協業、成果を促進する機会を促進できる」と強調した。
同社は、オープンAIの生成人工知能技術をマイクロソフト365にすでに統合しており、ほぼすべての生産性アプリケーションにコーパイロット(Copilot)機能を組み込み、新機能を順次提供している。
マイクロソフトによると、生成人工知能の業務利用については懐疑派と推進派がおり、推進派のなかでも特に多用者らは、人工知能を使うことで1日あたり30分以上を節約していると見積もられる。
▽人工知能技能を持つ人材を優先する経営陣
ワーク・トレンド・インデックスはまた、人工知能技能のない人材を雇わないと回答した幹部の割り合いが66%に達したと報告した。人工知能技能を持つ人材が雇用において優先される傾向は今後さらに顕著になることが確実視されている。
一部の大企業では、人工知能技能に関する職能研修を従業員らに提供しているところもあるが、それはまだ一般的ではない。そのため、従業員らは、たとえばリンクトイン・ラーニングやコーセラ(Coursera)、アマゾン、グーグル、そのほかのオンライン教育サービスの職能研修を利用して人工知能技能を勉強している。
(Gaean International Strategies, llc社提供)
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