ヒートポンプ技術でEVのエネルギー効率が向上

電気自動車(EV)の電力効率を高める技術として、ヒートポンプが注目されている。ヒートポンプは空気中の熱を取り込んで圧縮または膨張させ、冷暖房に活用する装置。

◇寒い時に威力を発揮

オートモーティブ・ニュースによると、フォードの2024年型「F150ライトニング」電動ピックアップ・トラックは、見た目は前年モデルとさほど変わらないが、デンソーと共同開発した新しいヒートポンプ技術の搭載でエネルギー効率が大幅に高められ、特に寒冷地でより効率的に電気を使えるようになっている。

電気で熱を発生させるこれまでの抵抗加熱式ヒーターは、電力を大量に消費する。EVの航続距離や効率を向上させる取り組みのほとんどは、電池の大きさや電池化学、パワーエレクトロニクス、車体重量、空力特性と関係していたが、ヒートポンプは気温が下がるほどEVの効率に大きな役割を果たす。この技術自体は新しくなく、1世紀以上前から建物の冷暖房に使われてきたが、自動車への導入は始まったばかりだ。

車載ヒートポンプの第1世代は、車両をどう温めるか、または冷やすかが重要だったが、ヴァレオ、デンソー、ボッシュ、ハイリマレリ(上海/東京)、韓国ハノン・システムズなど主要サプライヤーのほとんどは第2、第3世代の開発に取り組んでいる。世代が進むにつれて小型化・低価格化する多くの部品と違い、ヒートポンプは増加する車両システムから熱を集めることに使われるため、大型化・複雑化することが予想される。

◇大いに改善の余地あり

ヒートポンプは、コンプレッサー、コンデンサー、蒸発器、膨張弁、冷媒(液体または気体)などで構成され、空気や部品の熱を集めてシステム内の冷媒を加熱または冷却し、コンデンサーの上を通過する空気の温度を変えて車内を暖めたり冷やしたりする。

内燃エンジン車では、エンジンの冷却水が温まれば車内の熱源となる一方、エアコンはまったく別のシステム(コンプレッサー、コンデンサー、蒸発器、冷媒)を使って車内を冷やす。ヒートポンプも従来のシステムと同様、稼働中はエネルギー(電気)を消費するが、効率を改善できる分野は多い。

デンソーはモジュール方式で改良を進めている。例えば、車両全体に分散していたバルブ(流量調整弁)を1個のマニホールド(集合配管システム’)にまとめ、ホースや接続部の数を減らして漏れの可能性を減らしている。最も効率化が期待できる分野の一つは、ヒートポンプを制御するソフトウェアで、デンソーのエンジニアは「エネルギーがどこに向かうのか、いつそこに到達するのか、その瞬間に起きている物理学的、力学的なことをどれだけ理解するかが重要」と話す。

ヴァレオの次世代ヒートポンプは、より軽く、エネルギー消費量が減り、より速く熱を供給できる可能性が高い。EVの機械や電気部品からより多くの熱を回収できれば、熱を生み出すために必要な電力はより少なくて済む。

各部品会社は、ヒートポンプシステムでさまざまな液体や気体(プロパンなど)の使用を検討しており、エアコンシステムと同じ冷媒を使うヒートポンプもあれば、内燃エンジン車のラジエーターと同じグリコールを使うシステムもある。ただ、ヒートポンプを最高の効率かつ最低のコストで動かすには、自動車の設計段階からサプライヤーが関与する必要がある。

(U.S. Frontline News, Inc.社提供)

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