大富豪マーク・キューバン氏、医薬品業界に風穴を 〜 価格つり上げに激怒、処方薬直販サイトを立ち上げ

医薬品業界の不透明な商慣行に憤慨して同業界の実態を打破するためにマーク・キューバン・コスト・プラス・ドラッグス(Mark Cuban Cost Plus Drugs)を共同設立したベンチャー・キャピタリスト兼起業家のマーク・キューバン氏は、10月中旬の「ファースト・オピニオン・ポッドキャスト」に出演し、同業界には深刻な闇があると同時に、「自分がこれまでかかわってきたビジネスのなかでもっとも破壊しやすい業界だ」と話し、話題となっている。

キューバン氏は、NBAのダラス・マーヴェリックスの所有者であり、人気の起業家発掘テレビ番組「シャーク・タンク」にも出演していた著名大富豪だ。

スタットニュースによると、「マーティン・シュックレリがいなければ、自分は医薬品業界に参入していなかった」と語ったキューバン氏は、複数の投資会社や製薬会社を創設したシュックレリ氏がダラプリムの価格を大幅に引き上げたことに激怒し、コスト・プラス・ドラッグスを立ち上げたことを説明した。

シュックレリ氏は、自身が立ち上げた製薬会社チューリング(Turing)が抗寄生虫薬ダラプリムの製造権を獲得し、1錠あたり13.5ドルから750ドルと56倍に価格をつり上げたことが2015年9月に発覚し、摘発された。2015年12月に証券詐欺罪で告発され、FBIに逮捕され、証券詐欺罪と陰謀罪で2017年に有罪となり(懲役7年、6年半で仮釈放)、民事裁判でも7000万ドルの罰金を科せられた。

米医薬品業界にはPBM(pharmacy benefit manager)という第三者業者がたくさん存在する。PBMは処方薬関連福利厚生を管理するサービスを提供している。製薬会社や薬局、PBMらの取り引きは完全に不透明で、価格を操作したり不当につり上げたりといった問題がある。また、特定の処方薬を処方した場合の還付金(裏金)といった商習慣もある。

コスト・プラス・ドラッグスは、そういった闇に大きな風穴を開けることをねらっている。不透明な中間業者との取り引きや価格操作の余地を排除し、高額の処方薬またはそれと同等の医薬品をオンラインで直販することで格安価格で提供している。たとえば、グリーヴェック(Gleevec)というブランド名で売られているがん治療経口薬イマティニブ(Imatinib)の一般的小売価格は約2500ドルだが、コスト・プラス・ドラッグスではそれを約13ドルで直販している。同社によると、グリーヴェックの製造コストは約7ドルだ。

同社は、患者らが低価格で処方薬を買えるよう、同社のサービスを患者に紹介するよう医師たちに呼びかけている。

(Gaean International Strategies, llc社提供)

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