玩具業界も関税による深刻な影響を懸念

トランプ政権の関税政策は、玩具業界にとっても大きな懸念事項となっている。

◇業界の回復が困難に

ウォールストリート・ジャーナルによると、玩具業界は中国からの輸入比率が高く、3月初めにニューヨークで開催された業界展「トイフェア」では、大手から中小まで中国製品への依存度が高い数百の玩具メーカーが、生産をどこに移すべきか、価格がどこまで上がると消費者は購入を控えるのかといった懸念を口にした。

大手は、販売業者との値段交渉や世界的なサプライチェーン(供給網)の配置換えによってコストの抑制を図っているが、中小企業にはそのための経営資源がない。玩具協会のグレッグ・エイハーンCEOは「玩具への関税の影響を回避できる安全地帯が今はどこにもなく、この不確実性がビジネスに影響を与えている」と話す。

米玩具業界は、新型コロナウイルスのパンデミックをきっかけに売り上げが急増したものの、ここ2年間はほぼ横ばい状態だった。関税は企業のコストを押し上げるだけでなく、消費者の購買意欲を削ぐ要因にもなるため、業界の回復がより厳しくなる。エイハーン氏は「規模の大小を問わず、どの企業も20%以上のコスト増には耐えられないと言っており、その負担は間違いなく米国の消費者に転嫁されるだろう」と警告している。

◇消費者の購買行動にも影響

現在、玩具の約80%は中国で生産されているが、企業は関税のリスクを軽減するために生産拠点の分散を進めている。これは第一次トランプ政権で関税の懸念が生じた時から始まった長期戦略で、大手のハスブロ(Hasbro)は近年、ベトナムやインドに新工場を建設するなど事業の多角化を進め、現在中国の生産比率は約40%となっている。競合するマテル(Mattel)も、特定の国への依存度を下げるためサプライチェーンの多様化を進めており、スティーブ・トツキ最高商務責任者(CCO)は「この構造で貿易戦争の影響をある程度はかわせる。それでも多くの企業にとって価格上昇は避けられない現実。状況はわれわれの予測を超えて変化している」と述べた。

関税の影響で、玩具の価格は消費者が受け入れられない水準に達する可能性がある。2024年は業界売り上げの半分以上を20ドル以下の低価格商品が占めたが、価格が上がれば消費者はより安い商品に切り替えるか、玩具の購入自体を控える可能性が高まる。

コピー商品が出回る恐れもあり、特に年末商戦期に安全性の低い玩具が流入する懸念がある。第一次トランプ政権では業界に関税の免除が認められたため、玩具協会は今回も同様の対応を求めてロビー活動を強化している。

◇中小企業は存続の危機

神話やモンスターをテーマにしたぬいぐるみブランド「Totym」を約半年前に立ち上げたマイケル・アゴスタ氏は、これまで事業に20万ドルを投じているがまだ利益を出していない。大手のような経験も資金も時間もない同社にとって、中国からの生産移転は現実的ではなく、トランプ関税によってコストは20%上昇する見込みだが、値上げすると成長が止まる恐れがあるため、当面はコストを吸収するつもりだという。しかしアゴスタ氏は「商品を一つ売るたびに赤字になるなら値上げするしかない。でないと事業を存続できない」と話している。

(U.S. Frontline News, Inc.社提供)

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