トランプ大統領による関税の実施、特に中国製品に対する高い関税は、南カリフォルニアへの貨物船の流れを止め、港湾業務に依存する地域経済に深刻な打撃を与えている。
◇コンテナ船入港が17%減
ウォールストリート・ジャーナルによると、貿易と物流は南カリフォルニア経済の大きな柱で、直接雇用は約90万人に上り、地域全体で約5000億ドルの経済効果を生み出している(ロサンゼルス郡経済開発公社)。
ロサンゼルス港とロングビーチ港という隣接する二つの港は、一つの巨大な複合港湾として機能し、米国最大のコンテナ輸入拠点として全米コンテナ輸入量の3分の1以上を扱っている。その半分以上は中国からの輸入で、2024年は中国から推定1300億ドル相当の商品がこの港を通過した。
ところがこの4月は、同月に発動される一連の高関税措置を見据えた小売業者や製造業者が家具、衣料品、原材料、自動車部品などの注文を3月のうちに保留するか取り消したため、船会社は中国から米国へのコンテナ船航行を数十件取りやめた。関係者によると、5月前半のコンテナ船入港は前年同期比で17%減少し、入港した船の積荷も通常より少なかったという。
◇雇用や周辺ビジネスに影響
港へのコンテナ流入量の減少は、港湾労働者や倉庫従業員の労働時間が減り、トラック運転手の貨物輸送量が減ることを意味する。それはまた、地元のレストランやトラック販売代理店、修理工場にとっても、営業時間の短縮や人員の削減を意味する。
湾岸地域から半マイル内陸のサンペドロにある「Big Nick’s Pizza」は、売り上げが約15%落ち込んでいる。LA港の職員によれば、コンテナが4個上陸するごとに全米で1人分の雇用が支えられるという。
関税措置を懸念する小売業者や製造業者が発注を前倒しした影響で、港は最近まで記録的な量の輸入貨物を処理していた。しかし西海岸の港湾労働者を代表する国際港湾倉庫労組(ILWU)によると、最近の輸送停滞の影響で、フルタイムの港湾労働者の勤務日は通常の週5~6日から週3~4日に減少。ILWU南カリフォルニア支部のゲーリー・ヘレラ支部長は「パートタイム労働者は仕事の機会が全くない」と話した。
地域の物流労働者や関連企業が支出を控えているため、地元の事業への影響も避けられない。ロングビーチを拠点に1000を超える小売店や飲食店にイタリア産の肉やチーズを供給している「Santa Fe Importers」は、売り上げが15~20%減少しているため、製造担当者約50人の労働時間を20%減らした。また、サンドイッチやパスタを持ち帰る港湾労働者、トラック運転手、港湾業者の数が減ったため、売り場のカウンター担当者も早めに帰宅させている。
◇先行きは不透明
5月半ば、中国の輸入品に対する関税が145%から30%に緩和されたことで貨物量が一時的に増え、負担が多少軽減される可能性もあるが、LA港のジーン・セロカ事務局長は、それでも港湾活動を完全に回復させるほどの急増は見込めないと話した。30%という関税率は多くの輸入業者にとって依然として高く、貿易の先行きは不透明だという。
(U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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