全固体電池、北米では優先順位低め~バッテリーショーから

全固体電池は、エネルギー密度、信頼性、安全性の点でほかの電池技術を上回る可能性があるが、10月にミシガン州で開催された電池技術展示会「北米バッテリーショー」に参加した専門家の間では、北米では電動車用の主流電源になるとは限らないとの見方が多かった。

◇中国が先行

オートモーティブ・ニュースによると、全固体電池は液体またはゲル状の電解質を使わず、燃えにくい固体材料を負極と正極の絶縁材(セパレーター)およびイオン伝導体として使う電池。車載用途の利点としては、軽量でエネルギー密度が高く、電力をより多く蓄えられるため電気自動車(EV)の航続距離を延ばせる、事故発生時や電池システムの故障時の発火リスクが極めて低い、温度の動作範囲が広い上にサイクル寿命も長く、充電速度も従来のリチウムイオン電池より速い可能性がある…といった点が挙げられる。

イスラエルの電池コンサルティング会社デレオン・エナジーのシュムエル・デレオンCEOによると、中国では現在、固体電池の量産化競争が激化しており、16社が市場シェア獲得、さらには生き残りを懸けて開発を進めているという。中国での本格的な量産は少なくとも3~4年先とみられているが、2029年または30年までに高価格帯の限られた車種に全固体電池が採用される可能性もある。それ以前に中国では、液体電解質を5~10%含む「半固体電池」の量産が始まる可能性が高い。

しかし、こうした中国の状況がそのまま北米に当てはまるとは限らない。中国企業は市場シェア拡大に向けて巨額の損失を出す覚悟があるが、北米の自動車メーカーやサプライヤーにはその余裕がない。

◇ GMはコスト最優先

ゼネラル・モーターズ(GM)のカート・ケルティ副社長(電池・推進・サステナビリティー担当)はバッテリーショーで「近い将来、GMが全固体電池パックを提供する計画はない」と話した。同社は、車種ごとに最適な性能、航続距離、コストを実現するため3種類の電池を使い分ける戦略を採っており、最優先課題はコスト削減で、その次に性能向上とサプライチェーン(供給網)の国内化が続くという。

ケルティ氏によると、GMは全固体電池を評価し、開発中の企業とも連携してはいるが、現時点ではリチウム・マンガン高含有(LMR)正極を使ったリチウムイオン電池の方がコストと性能の両面で勝ると判断しており「もし固体電池が有望だと確認できれば、すぐに車両への導入を進める」という。

GMのEVラインアップは、小型の「シボレー・ボルト」から大型の「GMCハマーEV」まで幅広いため、単一の電池技術で全車種に対応するのは非現実的だ。短期的には、エントリーレベルEV向けにリン酸鉄リチウム(LFP)電池、主力車種向けにLMR電池、高級車向けにニッケル・マンガン・コバルト(NMC)電池と3種類の電池戦略を展開する。ケルティ氏は「固体電池の実用化はまだ数年先。より近い将来に商業化されるのはシリコン技術だ」と語った。シリコンとグラファイト(黒鉛)の複合材を使った負極は、全固体電池と同等の性能を低コストかつ既存の製造設備で実現できるという。

フォードも全固体電池技術には関心があり、コロラド州の電池企業ソリッド・パワーとの協力を続けているが、当面は量産計画はないという。

(U.S. Frontline News, Inc.社提供)

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