IT投資なしの営業に限界〜人件費の上昇で

 米企業はこの10年間、情報技術(IT)分野への投資をできるだけ避けながら営業を続けて来たが、最近は投資を拡大せざるを得ない状況になっている。

 ウォールストリート・ジャーナルによると、企業のIT投資は人件費が安いと減速するのが一般的だ。米労働者の平均時給は、人件費の安い中国の台頭や金融危機による深刻な不況などを受け、過去10年間にわずか0.6%(インフレ調整済み)しか増加しておらず、それ以前の40年間の平均(1.6%増)を大きく下回っている。

 この結果、企業の売上高に占める人件費(賃金、給与、諸手当)の割合は、2002年第1四半期の62.7%から12年同期には57.9%に低下した。一方、民間企業が所有するIT機器やソフトウェアのストック(過去のIT投資から減価償却分を差し引いた額)は、07年末のリセッション入り前から伸びが小さかったが、リセッション後はさらに減速し、11年までの10年間は第2次大戦後最低の伸びとなっている。

 人件費やIT投資が減れば利益は増え、米企業の利益率は1960年代半ば以降で最大となっている。しかし、最近は中国の人件費も高騰し、民間賃金は11年に18.3%、12年には17.1%上昇した。さらに米国では失業率の低下が続き、企業が給料を上げずに需要を満たせる労働力を拡大することは難しくなっている。

 ベビーブーマーが引退年齢に達したことや人口増加の減速で、雇用市場のだぶつきは企業が考えるより少ない可能性もある。また、IT投資をしてこなかった企業が既存の労働者の生産性を上げて需要増に応えることは難しく、実際に過去3年間の生産性は90年代半ば以降で最も小さな伸びにとどまっている。

 このため米企業は今後、人件費やテクノロジー投資を拡大する可能性が高い。労働者にとっては朗報で、テクノロジーの開発や構築に携わる企業にとっても商機となるが、利益率が大幅に上がるにはかなり時間がかかるとみられる。

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