第61回 将来の仕事

文&写真/福田恵子(Text and photo by Keiko Fukuda)

9月を迎え、ニナは高校のソフォモアになった。私がニナに期待する今年の目標は、ボランティア活動に取り組むことと、将来の希望の職業をそろそろイメージすることだ。一時期、彼女は日本で英語を教える教師になるか、もしくはアメリカで日本語を教える教師になりたいと言っていた。一方で絵を描くことが大好きな彼女は、学校のキャリアデー(専門職に就く保護者が、その職業について生徒にプレゼンテーションしたり質問を受け付けたりするイベント)では、クリエイティブな職業に関心を持ったようだった。しかし、高校の1年目を終わった現在、「●●になりたい」とは一切明言しなくなった。

先日、友人の息子であるSくんが名門コロンビア大学のロースクールに合格した。彼はロサンゼルス郊外で生まれた後、9歳で日本に引っ越し、東京のインターナショナルスクールを卒業した。彼の夢はアメリカに戻って弁護士になることだった。もともと、私の友人であるSくんの母親が弁護士を目指していたこともあり、おそらく母親から弁護士がいかに素晴らしく、人の役に立つ仕事かということを聞かされて育ったのだと思う。

高校卒業後、SくんはLAに戻り、コミュニティカレッジに進学した。昨今、コミュニティカレッジから4年制大学に編入するのは非常に狭き門だ。そこで彼はストレートAの成績を取得し、推薦状を書いてくれる教授とも信頼関係を結び、2年後にはUCバークレーへの編入を勝ち取った。バークレーでは弁護士のサービスを受けることが難しい低所得者に法的サービスを提供する非営利団体に、ボランティアとして携わった。その経験を通じて、「法律を駆使した解決策によって相談者の人生が変わることに手ごたえを得た」Sくんは、ますます弁護士に憧れるようになったと振り返る。

チャンスをつかむ努力

バークレー卒業後、SくんはUCデービスのロースクールに進学した。「ロースクールで大変だったことは何?」と聞くと、彼は「クラスではソクラテス式といって、学生が意見を言うことでテーマに対する理解を深める方式が採用されていたんだけれど、自分以外の学生たちの素晴らしい発言内容と堂々たる態度に脅威さえ感じた」と答えた。

しかし、それで意見発表の作戦を練ったり、練習をしたりしたのではなく、「ロースクールの成績はほぼ試験の結果で決まる」ことを知り、自分にできることとして、試験で優秀な成績を収めることに全力を尽くしたそうだ。さらに最初の学期の成績を見て、もっと他のロースクールに編入するチャンスがあることに気づき、編入申請の準備を進めた。結果的に彼が進学を決めたコロンビア以外にも、シカゴ大学、ペンシルベニア大学、UCバークレー、ジョージタウンなどの名だたるロースクールの合格を手にした。ちなみに、アメリカのロースクールのランキング上位10校は、イエールを筆頭にスタンフォード、ハーバード、シカゴ、コロンビア、ニューヨーク、ペンシルベニア、ミシガン大学アナーバー、バージニア、デュークと続く。彼は「コロンビアに進むことで、より広いネットワークと大きなチャンスをつかめる」と、8月末にニューヨークへと旅立った。

私はSくんの家族ではないけれど、彼のことを誇らしく思う。そして、目標に対してぶれることなく、努力を続けた彼に敬意を表したい。優秀なロースクールに合格したこと自体も素晴らしいが、それよりもむしろ、「自分の目標とする職業に向かって、より確実なチャンスをつかむにはどうしたらいいか」を模索し、行動に移し続けたことが何よりも賞賛に値すると思う。

さて、ニナだ。これからの人生は長いが、その人生の多くの時間を占める仕事に必要な学問を修める進路決定までの時間は残りわずかだ。

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福田恵子 (Keiko Fukuda)

福田恵子 (Keiko Fukuda)

ライタープロフィール

東京の情報出版社勤務を経て1992年渡米。同年より在米日本語雑誌の編集職を2003年まで務める。独立してフリーライターとなってからは、人物インタビュー、アメリカ事情を中心に日米の雑誌に寄稿。執筆業の他にもコーディネーション、翻訳、ローカライゼーション、市場調査、在米日系企業の広報のアウトソーシングなどを手掛けながら母親業にも奮闘中。モットーは入社式で女性取締役のスピーチにあった「ビジネスにマイペースは許されない」。慌ただしく東奔西走する日々を続け、気づけば業界経験30年。

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