日本の年金請求手続き〜米国居住者が知っておきたいカラ期間、外国年金通算〜

今回は日本の年金の請求手続きの中で、海外居住者が知っておくと役立つ「カラ期間」「外国年金通算」について紹介します。

1.海外在住者の受給資格要件

現在日本の年金は老後の受給資格要件として10年(120カ月)の加入期間(毎月の年金保険料納付期間1)が必要となります。もともとは25年(300カ月)でしたが、2017年に10年に短縮されました。ここで海外(日本国外)居住者は、その間日本の年金に加入していなくても海外在住期間(「カラ期間」または「合算対象期間」といいます)2や、その国の公的年金(米国ではSocial Security、以下「SS」)加入期間3を通算(合計)することができます。

たとえば日本の年金に6年加入した後、米国へ移住するケースを考えてみましょう。日本の年金加入期間の6年だけでは10年の資格要件を満たしていませんが、その後米国で4年以上居住するか、または就労してSS Taxを納付すれば、日米の期間を合計して10年に達するため資格要件を満たすことになります。

したがって老後に日本の年金を請求する際、加入期間が10年に達していなければ、このカラ期間または外国年金加入期間を証明する書類の提出が求められます4

2.請求時の提出書類

上記のカラ期間および米国居住者のSS加入期間を証明する書類には以下があります。

(1)カラ期間の証明


①戸籍の附票

本籍地住所の履歴を記載する公文書で、本籍地の市町村役場で取得します。渡米時に転出届を提出するとその海外転出日(住定日)が記載されます。転出届を提出していない場合は記載がないので利用できません。

②出入国記録

日本の出入国日が記録されたもので法務省出入国在留管理庁にて取得します(窓口または郵送)。①の戸籍の附票を取得したものの、海外住定日が記載されていない場合に提出します。

③日本のパスポート(コピー可)

パスポートに日本出国・帰国の日付がスタンプされるので、そのコピーを提出しますが、渡米時から60歳までの期間を含む過去すべてのパスポートが必要です。①、②を取得したものの海外居住期間が証明できなかった場合に提出します。

(2)米国年金加入期間の証明

④SSカードまたはステートメントコピー

氏名と社会保障番号が分かるものだけあれば、日本年金機構が米国SSA(社会保障局)へ米国年金加入期間の照会をかけます。

3.審査手順
  • 日本年金機構がこれら通算期間を審査する場合、上記のいずれかの書類を確認するわけではなく①〜④の順に確認します。したがってまず①戸籍の附票を取得して提出しますが、ここに海外住定日が記載されていない場合は、②出入国記録を入手して提出します。大体のケースではこの記録で日本出国時期(海外渡航日)が判明しますが、当時のパスポート番号が分からないなどの理由で記録が見つからなかった場合は③パスポートによる審査になります。パスポートは日本出国時から60歳までのすべてのものが必要で、1冊でも紛失していると利用できません。パスポートも利用できない場合は、米国年金の通算を利用するため④の書類を提出します。また②の入手が困難な場合は④の米国年金加入期間を証明する方法での請求も可能です。
  • 海外在住者が日本出国時に海外転出届を市町村役場へ提出しないと、上記①の戸籍の附票に海外住定日が記載されません。この場合「日本に居住」と判断され、その間日本で年金保険料を支払っていない(保険料未納)と見なされるのでカラ期間にはなりません。日本年金機構では以前(数年前まで)はそうした場合でも②の出入帰国記録や③パスポートコピーがあればカラ期間を認めてくれましたが、最近は認めなくなりましたので注意が必要です。万が一カラ期間が認められず年金加入期間が足りない場合は、④の米国年金加入期間を証明する方法で請求します。
4.海外在住者が留意すべき点
  • 前述の通り、年金請求時にカラ期間を証明するためには戸籍の附票に海外住定日が記載されている必要がありますが、手続きがあまり認知されてなく届出していない人もいます。こうした人は今からでも構いませんので転出届を提出することをおすすめします(ただしカラ期間は60歳までの期間なので、60歳未満の人が対象)。
  • また④米国公的年金の加入証明を提出する場合、日本年金機構から米国SSA(社会保障局)へ記録の照会(問い合わせ)を行います。これによってSSAにその人が日本からの年金を受給することが分かってしまうので、WEP(外国年金受給による米国年金の減額制度)の対象者であることが判明してしまいます5

いかがでしょうか? 今回はかなり専門的で細かな内容です。よく分からない場合は弊社で今後開催する年金セミナーや個別にメール等でご質問下さい。

※1:保険料免除期間を含む
※2:ただし60歳未満の日本国籍のみに限定。外国籍を取得すると対象外となる
※3:米国など日本と社会保障協定を締結している国に限る
※4:老齢厚生年金受給者が死亡した場合に支給される遺族厚生年金の場合は、加入期間が25年(300カ月)必要
※5:対象者の一部は米国年金の規定により米国年金が減額されます

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蓑田透 (Minoda Toru)

蓑田透 (Minoda Toru)

ライタープロフィール

早稲田大学理工学部卒業後、総合商社入社。その後子会社、外資系企業等IT業界で開発、営業、コンサルティング業務に従事。格差社会による低所得層の増加や高齢化社会における社会保障の必要性、および国際化による海外在住者向け生活サポートの必要性を強く予感し現職を開業。米国をはじめとする海外在住の日本人の年金記録調査、相談、各種手続きの代行サービスを多数手がける。またファイナンシャルプランナー、米国税理士、宅建士、日本帰国コンサルタントとして老後の日本帰国に向けた支援事業(在留資格、帰化申請、介護付き老人ホーム探し、ライフプラン作成、不動産管理、就労・起業、税務等の相談・代行)や、海外在住者の日本国内における各種代行、支援サービス(各種証明書の取得、介護・葬儀・相続など日本在住の老親のサポート)を行う。

●豊富な実績に基づくていねいなサポートで
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