シリーズ世界へ! YOLO② 韓国 世界文化遺産をめぐる旅
文&写真/佐藤美玲(Text and photos by Mirei Sato)
- 2010年9月20日
安東
Andong
朝ソウルを出て、車で、韓国南東部の慶尚北道へ向かう。反対車線の渋滞を横目に都市部を抜けると、あとはひたすら山と田畑が続く。韓国は国土の7割が山だと聞いた。慶尚北道は、岩の多い小白山が横切り、洛東河が中央を流れ、南に平野、東は海岸線という変化に富んだ地形。四季折々の美しさに加えて、文化遺産が多いことで知られる。
3時間ほど走ると、安東(アンドン)に着いた。「精神文化の首都へようこそ」という看板が目に入る。ここは、朝鮮王朝を支えた両班(ヤンバン)と呼ばれる支配階級の貴族や、官僚、知識人などを数多く輩出した土地。古代からの居住地でもあり、政治や宗教の変遷を超えて受け継がれてきた民族文化が色濃く残る場所として、韓国人にとって今も特別な土地だという。
河回村
Hahoe Folk Village
韓国には、姓を同じくする一族がかたまって住む村がある。「河回村(ハフェマウル)」はその一つで、豊山(プーサン)・柳(リュウ)氏の一族が600年以上守ってきた。歴史的建造物に指定された瓦や藁葺き家屋に、今も実際に人が暮らしているのは希少で、世界遺産登録を申請中。
歓迎の昼食は、安東名物の祭礼食「チェサ」。先祖の霊を迎えるときや、新年を祝うときに振る舞われる特別な料理で、野菜や肉、塩サバ、餅などが並ぶ。正式には香を焚いて霊を呼び寄せてから箸をつけるそうだ。日本のお盆のようなものだろうか。
村は三方を山に囲まれ、名前の通り、川がS字型に流れる。砂浜、崖、濃い松林もあり、かつては貴族が小舟を浮かべ、景色を愛でながら歌を詠み、火祭りを楽しんだ。100戸はある民家を見て回ると、優に2時間はかかる。どちらかといえば野外博物館のようで生活臭は感じられなかったが、韓流スター、リュウ・シウォンの実家があり、「ヨン様」ことペ・ヨンジュンが宿泊した民家とともに、人だかりがしていた。
村を出たところに、安東に12世紀から伝わる仮面舞踊劇「別神(ビョルシン)グッ」を見せてくれる館がある。仮面は、貴族、僧侶、美女、道化、老婆など10種類ほどあり、かぶった演者が笑うと仮面も笑い、怒ると仮面も怒った表情になるとか。収穫祭などの折に上演されたが、笑いを誘う風刺劇で、階級社会における不満や争いごとをうまく収める意味合いもあったらしい。
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