シリーズ世界へ! YOLO⑦ セイシェル
エデンの園と呼ばれた島
文&写真/佐藤美玲(Text and photos by Mirei Sato)
- 2012年9月20日
一方で、アイランドならではの気苦労もあるらしい。マへ島で何度か私の運転手をしてくれたダニーさんいわく、人口は3対1ぐらいで圧倒的に女性が多い。男性は選り取り見取りかと思いきや、女性があまり結婚したがらない。するからにはそれなりの「見返り」を期待される。
さらに、男女比からいって、「ペア」になるだけでは余ってしまい、必然的に(?)既婚男性は「愛人」を数人抱えることになる。しかし大っぴらにという訳にはいかず、狭い島なので「密会」も大変だから、地元の人しか知らない「不倫専用ビーチ」がある。産婦人科も数えるほどしかないので、妻と愛人の出産に同時に立ち会う羽目になった男性もいて…。
と、嘘か本当か分からないエピソードを、実に面白く話してくれた。そういうダニーさん自身は、30代で未婚。母親と一緒に住んでいて「ガールフレンドは一人だけ」と強調している。
男女の力関係については、スティーブさんも愉快な説を披露。セイシェルではゾウガメをペットとして飼う家が多いのだが、伝統として結婚式にはそのカメを殺して食べる風習がある。「それで『可愛いカメを殺したくないから』と結婚を断る女性が多い」と言うのだった。
◆ ◆ ◆
ココ・デ・メアとアフリカの島国というのがどんなものかを見てみたいと思って決めた旅だったが、実はセイシェルについてそれ以上のことはよく知らなかった。出発前、周りの日本人に「セイシェルに行く」と伝えると、決まって「松田聖子の歌ね!世界で一番夕焼けがきれいな場所でしょ?いいなー」と言われ、びっくりした。
ユーチューブで探すと、確かに、白いフリフリのドレスを着た「聖子チャン」が歌っていた。「セイシェルの夕陽がぁ〜、いま海に沈んでくわ〜」「あなたにも見せたいわ〜。世界のどんな場所で見るよりも美しい夕焼けよ〜」。なるほど、意外なところでセイシェルは日本人には有名だったのか。
セイシェルの人たちに「セイコ・マツダ」といっても誰も分かってくれなかったが、「きれいな夕陽が見たいなら」と、マへ島の西にあるボーバロンのビーチに行くよう勧められた。あいにく曇り空で、落ちていく太陽の手前に大きな雲があり、その後ろが薄ら赤くなっているだけだ。
パーフェクトな夕陽は見られないなと思いながら座っていると、沈む直前の最後の輝きの瞬間、雲の隙間をついて、海面から天空に向かって2本の柱が立ち上ったかに見えた。赤紫とゴールドのなんとも言えない光が空を染め、ルーベンスの宗教画を思わせる神々しさだった。
取材協力/セイシェル共和国政府観光局 (Special Thanks to the Seychelles Tourism Board)
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