
もとは「ハリウッドランド」というサインだった
Photos courtesy of the Hollywood Sign Trust and HollywoodPhotography.com. All Rights Reserved.
~Life of the Hollywood Sign~
脚光、転落、しぶとく復活…
老い知らずの大女優
ハリウッドサインが誕生したのは1923年。最初は13文字で「HOLLYWOODLAND」だった。不動産業者が、新しく造成した高級住宅地ハリウッドランドを宣伝するために、2万ドル(当時)かけて建設。薄い金属板を白く塗ってつくったアルファベットをヘリコプターでつり下げるという、大掛かりな作業だった。電球も4000個つけた。
住宅が売れたら取り壊すはずだったが、「西海岸のシンボル」として観光客がサインを目当てに訪れるようになり、そのままに。49年、修理が必要になったのをきっかけに、ハリウッド商工会議所が市と協力して「LAND」を撤去。現在の9文字になった。
サインの人生はけっこう多難で、地震や地滑りを体験。70年代にはシロアリに襲われて「O」の文字が崩壊、崖に転がり落ちてしまった。放火で「L」が燃える、という事件もあった。
市は新しいサインを作り直すしかないと判断したが、費用は25万ドル。とても無理だ——。断念しかけた時、救いの手を差し伸べたのが、雑誌「プレイボーイ」の創刊者ヒュー・へフナーだった。「プレイボーイ・マンション」のお屋敷で派手な寄付金集めのパーティーを開き(もちろんバニーガールもいっぱい)、ハリウッドの大物らが1文字ずつスポンサーに名乗り出た。
78年11月、真新しいサインが登場。お披露目の模様はテレビで生中継され、6000万人が見たそうだ。
これで安泰かと思いきや、2010年、投資会社がサインのすぐ横の土地を買って「住宅を建てて切り売りする」という衝撃的な計画が明らかになる。実はサインの西隣りの土地は、かつて大富豪のハワード・ヒューズが、恋人の女優ジンジャー・ロジャースと暮らす家を建てるつもりで買っていた。それが投資会社の手に渡り…。
土地を買い取ってサインを守るには125億ドルが必要だ。またもヘフナーが先頭に立ち、フェイスブックで大々的なキャンペーンを展開。日本を含めた世界中のファンから寄付が集まり、土地はすべてグリフィス・パークの一部として保護されることになった。サインは栄えある「国定歴史建造物」(National Historic Landmark)の認定も受けた。
昨年10月、すべての文字が、最新の白いペンキで塗り直された。「フェイスリフト」をバッチリ終えて、90歳の誕生日をめでたく迎えたというわけだ。
今年9月19日、ハリウッドのヒップなホテルで、サインの90歳を祝うパーティーが開かれたが、集まった面々には「高齢セレブ」が多かった。司会役としてパーティーを仕切ったのは、やはり今年90歳になるボブ・バーカー。アメリカの長寿ゲーム番組「The Price is Right」の元ホストで、ミス・ユニバースやミスUSAの司会も務めた人だ。
「私とハリウッドサインには、1923年生まれということ以外にも、幾つか共通点がありましてねえ。あちらは『修復』を重ねてますが、私も何度かやっておりますから」と挨拶して、笑いをとっていた。
サインを管理する非営利団体「ハリウッドサイン・トラスト」のクリス・バウムガート代表は、「山あり谷ありを経験しながらも、夢を追いかけ、エンターテインメント界のトップの座を射止めた」とサインを表現した。
確かに、サインの歴史を振り返ると、しぶとい女優の姿が見えてくるようだ。
広告モデルとしてデビュー、思わぬ人気でスターに。落ち目になると「メークオーバー」で、減量に成功。容姿と体調が崩れ出し、いよいよ終わりかと思いきや「プレイボーイ」で大復活。出演した映画は150本以上。90歳の今は、フェイスリフトとボトックスを欠かさない——。
Bring your dreams to Hollywood, give it your best, and you too will make it.
ハリウッドサインは、成功を夢見る無名の若者たちと、ライムライトを浴び続けようと必死な元若者たちにとって、これからもシンボルであり続けるのだろう。
The Hollywood Sign Trust
www.HollywoodSign.org
ハリウッドサインのイメージ管理、修理、清掃、保存などをする非営利団体。ウェブサイトで、サインの歴史や、鑑賞スポット、サインに近づく際の注意事項などが読める。
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