シリーズアメリカ再発見⑯
ハリウッドサイン90歳

文&写真/佐藤美玲(Text and photos by Mirei Sato)

頂上の見晴らし台では、サインを後ろから見下ろせるPhoto © Mirei Sato

頂上の見晴らし台では、サインを後ろから見下ろせる
Photo © Mirei Sato

山の頂上へ

 グリフィス・パーク(敷地面積5000エーカー)は、アメリカ最大の市営公園だ。ニューヨークのセントラル・パーク(同843エーカー)なんか、目ではない。セントラル・パークは、都会の公園として摩天楼に馴染むようしっかり美しく設計されている。それに比べるとグリフィスは、草木も伸び放題で野生に近い。高低差が激しく、ロサンゼルスが砂漠に近いことも思い出させてくれる。

サインがある頂上をめざしてハイキングPhoto © Mirei Sato

サインがある頂上をめざしてハイキング
Photo © Mirei Sato

 ハイキング用のトレイルがくねくねと幾つも走っていて、ハリウッドサインを遠くに眺めるだけならオプションは沢山ある。しかし山の一番上、サインのすぐそばまで行く道は1本しかない。サンセット・ランチの駐車場の脇から始まる「ホーリーリッジ・トレイル」。これを進むと、頂上へ続く1本道に合流できる。

 いきなり上り坂。たった2~3分とはいえ筋肉にインパクトを感じながら歩くと、ハリウッドサインが現れる。ちょっとした展望台ができていて、記念撮影に最適だ。たいていの観光客は写真を撮ったら帰ってしまう。

 頂上をめざすなら、そのまま歩き続けて乗馬のトレイルに合流する。しばらく行くと、馬たちと別れてUターンするような形で左へ折れ曲がる。ここからカーブが続き、0・5マイルほど歩くと舗装された道にぶつかる。ここで右へ。サインとは反対方向に行くように見えるので、たいてい皆ここで迷う。地図を広げて、ほかのハイカーたちと確認しあう。日頃クルマ生活に慣れ切ってひ弱なアンジェリーノたちは、若者でも結構息が上がっている。勾配がきつくなるにつれ、写真を撮るのに絶好のスポットが続くので、休憩のいい口実になる。

上り坂はきついが、景色がご褒美になるPhoto © Mirei Sato

上り坂はきついが、景色がご褒美になる
Photo © Mirei Sato

 45分ほど歩いただろうか。トレイルはいったん山の裏側に回り込む。再び山の表側へ出てきたところで、あった! H、O、Lの文字。サインと道路の間にはフェンスが張りめぐらされているのでそれ以上は近づけないが、もうひと登りすると見晴らし台があって、サインを後ろから見下ろす形になる。
 アルファベット1文字ずつが相当大きい。市内のあちこちから見えるのだから大きくて当たり前なのだが、高さ45フィート(13・7メートル)というから、小柄な日本人なら9人分ぐらいの身長だ。

 横1列にちょっとずつ前後しながら優美に並んだサインも、だけれど、その向こうに広がるロサンゼルスの全景にも感動する。レイク・ハリウッド、パロスバーデス半島、サンタアナ山脈、オレンジ郡まで。後ろを向けばサンフェルナンド・バレーが一望できる。

Hollyridge Trail / Griffith Park

Photo © Mirei Sato

Photo © Mirei Sato

www.laparks.org/dos/parks/griffithpk/
往復3マイル、高低差750フィート。頂上への行きは少々きついが、帰りは下り坂が続く。片道45分程度。サンセット・ランチの受付で、グリフィス・パークの地図をもらっておこう。サインまでの道順がよく分かる。
グリフィス・パーク内には、全長53マイルのトレイルが網の目のように走っている。日没後のハイキングは禁止。夏場は気温が相当上がるので要注意。冬でも日焼け止めや水分補給は必須。ハリウッドの観光がてらサンダルやジーンズの軽装で来てしまった外国人を見かけたが、都会の真ん中だからと甘く見ず、準備を整えてから歩き出そう。
サインがある頂上へアクセスする方法をインターネットなどで検索すると、サンセット・ランチよりもさらに下から急斜面を上がってくるコースや、サインの西側から山の尾根を伝ってくるコースも紹介されている。時間がかかってきつくなるだけで、最終的には1本の道に合流することを考えれば、ホーリーリッジ・トレイルが一番ラク。初心者にはおすすめだ。

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