第66回 犬のグループ(その3)
文&写真/寺口麻穂(Text and photos by Maho Teraguchi)
- 2014年3月5日
前回紹介したハウンド・グループの犬たちは、主に狩猟犬として、世界各地で狩りの手伝いに欠かせない存在として仕えていますが、狩猟以外の幅広い分野で仕事をしながら人間の生活を支えている犬たちがいます。AKC(アメリカン・ケネル・クラブ)では、それらの犬種をワーキング・グループと称し、狩猟用の犬種と区別しています。今回はその犬たちについてお話しします。
体も気持ちも大きく頑丈
ワーキング・グループの特徴は、体格の大きさと頑丈さ、そして勇敢さでしょう。雪山、氷河、急斜面の山岳、凍る海、また戦火の真っただ中など過酷な条件下で仕事をこなすため、このグループの犬たちは心身共に丈夫でなければいけません。
北極圏の厳しい寒さの中でそり引き犬として活躍するシベリアン・ハスキーやアラスカン・マラミュート。護衛犬や番犬として、また軍用犬、警察犬として人間の生活を守り続けているグレート・デン、ドーベルマン・ピンシャー、ロットワイラー、そしてマスチフ種の犬たち。雪山の救助犬として活躍するセント・バーナードや、アルプスの厳しい山の中でけん引犬として大きな荷物運びを助けるバーニーズ・マウンテンドッグ。厳寒や悪天候、また険しい山岳の中で羊などの家畜を守ってきたグレート・ピレニーズ。水をこよなく愛することから水中での作業に従事するポルトギース・ウォーター・ドッグやニューファンドランド。
これらの作業犬・使役犬は、厳しい状況の中でも懸命に働き、それらの仕事に従事する人々には不可欠な存在であると同時に、より頑丈で勇敢、判断力に優れ、高い知性を持ち備える犬種として改良されてきたのです。
家庭のペットに?
これらのワーキング・グループの犬を作業や使役目的ではなく、家庭のペットとして迎え入れる場合、注意しなければならない点があります。ほとんどの犬種は体が大きく、スタミナに溢れているので、飼い主自身も体力に自信がなければ十分な運動と刺激を与えてあげられないでしょう。また、子犬のころから社会性を養える機会を十分与え、基本マナーを習得させるための訓練もしっかり行うこと。さらに体が大きくなる将来に備えて、周りに対してフレンドリーで、飼い主が楽にコントロールできるようきっちりしつける必要があります。
また、彼らは飼い主からの指示を忠実に従う傾向を持っていますが、飼い主のことを十分に信頼・尊敬し、従えるリーダーだと判断できなければ、自分たちの独自の判断で行動しかねません。さらに、飼い主への忠誠心が非常に強いことから、護衛力が行き過ぎ、いったん守ると決めたらなかなか引き下がらないという性質も持っています。
そんな頑固で強い性格の犬をコントロールするには、ある程度の犬の飼育の経験と知識がなければ飼い主に大きな負担となる可能性があります。残念ながら初心者には不向きな選択でしょう。もし、家族として迎え入れるとするなら、事前にワーキング・グループの犬種を熟知した専門家や飼い主からしっかり情報を入手するのが賢明です。とはいえ、仕事命で忠誠心の大変強いワーキング・グループの犬たち。知識・経験・体力的に相性が良く、これらの犬種たちの要求を満たせる能力があるなら、一度は飼ってみたい夢の犬種かもしれませんね。
次回は「トーイ・グループ」について詳しくお話しします。お楽しみに!
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