第31回 クラブ活動

文/福田恵子(Text by Keiko Fukuda)

vanguard

 中学はもちろん高校にも多くのスポーツ系や文科系のクラブがある。ノアは中学では帰宅部だったが、高校に入って友達と一緒にダンスのクラブに入った。一時は自分の部屋や裏庭でくるくる回ったり、校外で開催されるダンスのイベントに出かけたりしていた。しかし、一時期から熱が冷めたのか、「まだ部員だ」とは言っているがあまり活動しなくなった。また、ノアは高校のチャイナクラブにも入部していた。3年連続で中国語のクラスを取っていたこともあり、中国について知りたいと思ったのか。これもまたいつのまにかフェイドアウトしていた。

 しかし上記とは別に極めて積極的に関わっているのがカードゲームのクラブだ。友達を会長に、自分を副会長に、自分たちで創設。私は知らされてなかったのだが、同じ高校に子供を通わせているママ友から、ノアがクラブの役員が集合するミーティングに出席していたことを聞き、本人に確認したら「(友達の)ロスと一緒にクラブを作ったんだ」と教えてくれた。しかも、勧誘活動まで展開し、瞬く間に20人の部員を集めたらしい。

 彼らがクラブ活動の対象としているのは、アメリカで人気の「カードファイト!!ヴァンガード」という名前の日本のカードゲーム。週末になるとロスの家にいそいそと出掛けていき、数人の部員で互いのカードを戦わせる「ミーティング」を開いている。さらに土曜の夜には、カードショップでのイベントにも張り切って参加している。

 何がそこまで夢中にさせるのか、親の私にはまったく謎だったが、ある日次のような光景を目撃。リトルトーキョーに出掛けた時に、ショッピングモール内のオープンスペースのテーブルを陣取って、アジア系の男の子たちが、ノアがまさに夢中になっているカードゲームに興じていたのだ。思わず彼らに「いつもここでプレイしているの?」と声をかけてしまった。すると中の一人が「そこのお店でカードを買い足したので、皆で早速遊んでいるんですよ」と教えてくれた。ノアと重なり、「高校のクラブ?」とさらに聞くと、「いいえ、僕たち、大学生です」との返事。

「おお、ごめんなさい。うちの高校生の息子も夢中なので、つい聞いてしまったの」と言わなくていいことまで口にした私。「いいえ、構いませんよ。楽しいんですよ、このゲーム。では良い1日を!」とさすがに大学生、きちんとした対応だった(高校生だと思ったことは既に不問)。

 ちなみにノアが「3月にビッグイベントがある」と言うので、てっきり卒業関連か何かかと思えば、部員と一緒に参加するカードゲームの大会があるのだそうだ…。

日本文化に誇り

 兄のノアがカードゲームなら、妹のニナは中学のアニメクラブに入っている。似た者兄妹。ランチタイムにキャラクターの絵を描いたり、日本のアニメ作品を観賞したりするらしい。ニナいわく「今日のアニメには字幕が付いていたんだけど、皆は字幕を追うのが大変でアニメそのものが楽しめなかったって言ってた。でも私は日本語わかるから全然問題なかったよ」とのこと。確かにそうだ。

 また、ノアとニナは学校ではスポーツ系クラブに入っていないが、個人的に週末、日本の武道に勤しんでいる。ノアは3年生の時に始めた合気道で既に黒帯、ニナは2年ほど前から弓道を習っている。これまた二人とも袴を身に着けるという点が共通項。昨年の9月には、ノアの合気道の先生が日本の親御さんの介護目的で引き揚げてしまった。

「師匠不在で強制閉鎖」になるかと思いきや、残った大人と上級生の弟子が、自主的に道場を借りて自分たちで運営していくことで、無事に続けられることになった。先生も試験の際には渡米すると約束してくれた。ニナの弓道の先生はアメリカ人。あらゆる日本の武道に精通し、自宅に弓道の稽古場まで完備している。

 アメリカに生まれ育っても、我が家の子供たちは日本文化に魅せられている。それにしても、アメリカの学校に日本のカードゲームやアニメのクラブがあって、さまざまな文化的背景を持った生徒が集まるのだから、やはり日本のポップカルチャーは素晴らしいと誇らしく思える。ノア自身も「カードゲームを通じて友達に日本のことがわかってもらえるし、(会長の)ロスは今日本語を一生懸命勉強している」と嬉しそうに話してくれた。

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福田恵子 (Keiko Fukuda)

福田恵子 (Keiko Fukuda)

ライタープロフィール

東京の情報出版社勤務を経て1992年渡米。同年より在米日本語雑誌の編集職を2003年まで務める。独立してフリーライターとなってからは、人物インタビュー、アメリカ事情を中心に日米の雑誌に寄稿。執筆業の他にもコーディネーション、翻訳、ローカライゼーション、市場調査、在米日系企業の広報のアウトソーシングなどを手掛けながら母親業にも奮闘中。モットーは入社式で女性取締役のスピーチにあった「ビジネスにマイペースは許されない」。慌ただしく東奔西走する日々を続け、気づけば業界経験30年。

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