シリーズアメリカ再発見㊱
Old is New… フロリダ デイトナビーチ

文&写真/佐藤美玲 (Text and photos by Mirei Sato)

De Leon Springs / デ・リヨン・スプリングス

 フロリダには州全体で約170カ所の州立公園がある。その多くが、水に関係している。
 デイトナビーチとオーランドの中間にある「デ・リヨン・スプリングス州立公園」は、天然の泉が有名だ。セント・ジョンズ・リバーの川底から、毎日1900万ガロンが湧き、流れ出ている。
 水温は年間通して華氏72度と快適だ。だから冬になると、温かい水を求めて、海からマナティーがここまで泳いでやってくる。ワニやラッコ、ヘロンもいる。
 濃い緑のオークツリーに、スパニッシュ・モスが垂れ下がる、南部特有の風景だ。
 公園の入り口には、「永遠の若さを約束する泉」なるプールがある。自分たちを「マーメイド」(人魚)と呼び、毎日ここへ来て飛び込んで泳ぐシニアのグループがいるとか。
 先住民がこのあたりに住み着いたのは6000年前ぐらい。19世紀にはいると白人の入植者が来て、フロリダの奴隷制経済を支えたサトウキビや綿花のプランテーションに変えていった。セミノール族は追い出され、プランテーションも焼けてなくなった後、ウィンターリゾートとして開発された。
 19世紀後半にできたリゾートには、ホテル、ラウンジ、ダンスクラブ、スキューバダイビング教室、ジャングルクルーズなどの施設があった。当時の写真を見ると、「サンシャイン・サリー」という名のメスのゾウが披露する水上スキーが、観光客を引き寄せる目玉のショーだったようだ。今なら、「動物虐待」として大批判を浴びることだろう。
 一種の「テーマパーク」の走りだったのだろうが、オーランドに「ウォルト・ディズニー・ワールド」ができて、廃れてしまった。栄枯盛衰、というべきか……。
 ただ、大昔から泉を聖地と生計の拠り所にしていた先住民にしてみれば、ゾウの水上スキーこそ、とんでもないものだったはず。おごれる者は久しからず——、である。
 公園内の掲示板は、ちょっとではあるが、セミノール族の激しい抵抗の歴史にも触れている。


1 2 3

4

5 6

この記事が気に入りましたか?

US FrontLineは毎日アメリカの最新情報を日本語でお届けします

関連記事

アメリカの移民法・ビザ
アメリカから日本への帰国
アメリカのビジネス
アメリカの人材採用

注目の記事

  1. 日本では、何においても横並びが良しとされる。小学校への進学時の年齢は決まっているし、学校を...
  2. Water lily 今年は年頭から気にかかっている心配事があった。私は小心なうえに、何事も...
  3. 峡谷に位置するヴァウリアル滝の、春から夏にかけて豪快に水が流れ落ちる美しい光景は必見。島には約16...
  4. 2024年6月3日

    生成AI活用術
    2024年、生成AIのトレンドは? 2017年に発表された「Transformer」...
  5. 今年、UCを卒業するニナは大学で上級の日本語クラスを取っていた。どんな授業内容か、課題には...
  6. ニューヨーク風景 アメリカにある程度、あるいは長年住んでいる人なら分かると思うが、外国である...
  7. 広大な「バッファロー狩りの断崖」。かつて壮絶な狩猟が行われていたことが想像できないほど、 現在は穏...
  8. ©Kevin Baird/Flickr LOHASの聖地 Boulder, Colorad...
ページ上部へ戻る