シリーズアメリカ再発見㊱
Old is New… フロリダ デイトナビーチ

文&写真/佐藤美玲 (Text and photos by Mirei Sato)

Historic Downtown / ヒストリック・ダウンタウン

 デイトナビーチのダウンタウンへ向かった。目抜き通りのビーチ・ストリートに沿って、小さな商店が並ぶ。
 ここはデイトナビーチの歴史的地区で、建物の色からして古びた感じがする。静かで、車も人もあまり通らない。
 街路に並んだパームツリーが、夕日を浴びて美しい陰影をアスファルトに落としている。芸術作品のようだ。
 カフェやレストランはあるけれど、外から見ると営業中なのかもわからない。フロリダでは、一般的に夕食が早いという。「ディナーは5時から」などと言われることもあり、都会や外国人の感覚ではちょっと考えられない時間設定だ。フロリダ育ちの友人に聞いてみると、「午後から夕方にかけてスコールが降って、5時頃にはディナーを始めて、9時には消灯かな」。そんな生活のペースが似合うのが、「フロリダ・ライフ」ということらしい。
 ビーチ・ストリートに並行して、ハリファクス・リバーが流れている。消防署の裏手に小さなマリーナがあって、ボートが停泊していた。
 その向かいに、けっこう立派な野球場があった。ジャッキー・ロビンソン・ボールパーク。黒人初の大リーガーとデイトナビーチ、どんな関係があったっけ、と考えてみたが思いつかない。
 調べてみると、1946年、ロビンソンが最初にマイナーリーグの春季キャンプでプレーしたのが、ここデイトナビーチだった。当時ロビンソンは、ブルックリン・ドジャース傘下のモントリオール・ロイヤルズに所属していた。れっきとした「南部」で、独特の人種差別が残るフロリダ。ほかの街が試合開催を拒否する中、デイトナビーチが受け入れた。
 その誇りが、球場名として受け継がれ、入り口にはロビンソンの銅像も建つ。ベスーン・クックマン大学の野球部と、マイナーリーグのデイトナ・トートゥガの本拠地でもある。夏の間は、ほぼ毎晩、夕暮れどきからゲームが始まる。
 川の上に渡した電線ケーブルに、釣りで使う疑似餌と釣り糸の切れはしが、いっぱいぶら下がっていた。まるで、ニューヨークやロサンゼルスの街の電線に引っかけたスニーカーみたい。都会の「電線スニーカー」は、ギャング抗争などで若くして死んだ仲間を悼む、一種の葬送の儀式だ。
 もしかするとデイトナビーチでは、釣りにからんだ「アーバン・レジェンド」があるのかしら、と興味がわいたが……。地元の人に聞いてみると、「えぇ? ただ単に釣りがへたくそで引っかけちゃう人が多いのよ」と言われてしまった。


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