シリーズアメリカ再発見㊶
ハワイ島 マウナラニの息吹

文&写真/佐藤美玲(Text and photos by Mirei Sato)

魚が集う場所

緑色に輝く、古代ハワイの養魚池 Photo © Mirei Sato

緑色に輝く、古代ハワイの養魚池
Photo © Mirei Sato

天候が安定していて、ハワイ島には珍しい白い砂浜があるため、コハラ・コーストにはリゾートホテルが集まっている。
1983年開業の「マウナラニ・ベイ」は、前述の王族御用達の養魚池が、7つも残っていることで有名だ。
ホテルのカルチュラル・ディレクター、ダニエル・アカカさんの案内で、見学させてもらった。
ホテルのビーチから海岸沿いに歩いていくと、びっくりするほど美しい緑色の池があった。緑といっても単一色ではなく、黄色がかかった緑から、エメラルドグリーン、濃くにごった緑まで、説明のつかないグラデーションとリフレクションを発している。
水は透き通っているようでもあり、ドロっとしているようでもあり。独特のオーラを放っている。色の違いは、プランクトンによるものだ。
隣りの池のほとりでピシャンと音がして、するすると這う生きものが見えた。ヘビかと思ったら、ウナギ(ハワイ語でプヒ)だった。こちらは別名「ウナギ池」ともいうそうで、由来はといえば・・・。
大昔、生まれたばかりの子供を連れて、ここに海藻を採りにきた女性がいた。熱中していたら、いつのまにか子供がいなくなっている。土から池に向かって、ヌメヌメッっとした跡が残っていた。まわりの漁師に聞くと、「ウナギになっちゃったのでは」という返事。母はしかし、悲しむよりも、自分の子供が池の守護神になった、スピリチュアルなパワーを得たのだと解釈して、喜んだという。
そんなわけで、今でも時折、この池から赤ちゃんの泣き声が聞こえることがある。というのが、地元に残る言い伝えだ。
栄養たっぷりの養魚池は、そのまま海に続いている。境目を区切るものは、魚を逃がさないように古代ハワイの人が建てた木の柵だけだ。門のように見えるこの柵は、「マカハ」(Makaha)と呼ばれる。
「ハ」は、ハワイの言葉で「breath」を意味する、とダニエルさんが教えてくれた。「ハワイの人は、会えば『アーローハ』と言うでしょう。初めて会った人とでも、互いに鼻と鼻をくっつけて挨拶します。相手の存在を認め合い、『ハ』を通じて、スピリットをシェアするためです」
アーローは、「〜の存在」という意味だ。つまり、「あなたの存在を息吹の中に感じます」と言っている。アロハ=ハワイのキャッチフレーズのように濫用されているけれど、そんな大事な意味があったとは知らなかった。
ハワイの「ハ」、も同じこと。「ワイ」は、ハワイで命そのものと信じられている「水」を意味する。
「マカ」は「海水」だ。養魚池の柵「マカハ」は、海がもたらす命の息吹。日々の生活を支える魚を与えてくれる、海への感謝の気持ちが込められている。
潮が満ちてきた。柵のまわりには、黒くて小さなカニが群がって、波が寄せると落ちないようにしがみついている。
この小ガニたち、ダニエルさんに聞くと、かなり美味しいらしい。「甲羅を割って、シーソルトをちょっとつけてなじませて、そのまま生で食べるのが一番です。テンプラにしてもいいですね」
どこかのレストランで食べられるのなら行ってみたい、と思って、滞在中地元の人に聞きまわったけれど、みんな、うーんと考え込むばかり。「魚屋に行けば売っているよ」と言われた。
きっと、家庭で食べるのが当たり前のものなのだろう。味わいたければ、だれかと親しくなって家に呼んでもらうしかなさそうだ。なんでも観光客向けにできているオアフ島とは違うんだなあ、と思った。

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