エッセー、小学校では日本語で言う作文、中学以降では小論文のことだ。ニナの小学校時代の作文のプロジェクトで一番印象的だったのは、彼女が3年生の時のもの。各生徒がアメリカ史の偉人を一人ずつ取り上げ、その人生と功績について肖像画のイラスト付きで文章をまとめるというものだった。ニナは黒人奴隷をカナダに逃亡させる活動に関わったハリエット・タブマンについて書いた。
担任のヘラ先生が素晴らしかったのは、生徒全員の文章とイラストを見開きにレイアウトして、立派な本に製本してくれたことだ。1冊20ドル程度だったと記憶しているが、形になって残ることで、文章を書くことの楽しみを3年生にして実感させてくれたように思う。
また、ノアの小学校時代に最も印象に残っている作文プロジェクトに、誕生日を迎えた生徒にクラスメイト全員が手紙を書くというものがあった。まず、本人が趣味、将来の夢、好きな食べ物などを含めた自分自身を紹介するポスターを作成する。それを教室の壁にしばらく掲示し、クラスメイトたちはそのポスターの項目も含めて本人に聞きたいこと、伝えたいことを手紙に盛り込むのだ。
そしてノアは誕生日当日、クラスメイトの人数分の手紙を持ち帰った。それを読むと良くわかったのが、文章を書くことの基本的なモチベーションは「好奇心」だということだ。ノアとたくさんの思い出を共有している友達や、彼の夢に対して「どうしてその仕事に就きたいの?」と知りたい気持ちを抑えられない友達は、自然と文章にも熱がこもっていた。
心の葛藤を表現する
中学の最終学年であるニナの最近のエッセー、そのテーマは「自分の性格について」というものだった。タイトルは「NとO (An N and an O)」。以下は、その要約。
「親友には、私はもっと自分自身の考えを明確に言葉にすべきだと言われる。(中略)私にとってNOと言うことはとにかくハードルが高い。嫌ならNOと言うべきだとアドバイスしてくれた友達に『頑張ってみる(I’ll try)』と言うと、『頑張るのではなく、嫌な時はNOと言うのだ』と念押しされた。(中略)たかがNとOという二文字だ。自分が嫌なことを頼まれた時は、次回からははっきりNOと言うことにしよう。できるだけ優しく、相手を傷つけないように。相手はどう思うだろう。でもそれができれば達成感を得られる気がする」
実際のエッセーにはかなり詳しいエピソードが満載されていた。親ばかと言われれば確かにそうだが、心の葛藤を文章に表現できていたニナを誇らしく思った。そして、英語の時間に、本来の担当教師ではない代理教師がニナのエッセーを読んでこう言ったそうだ。
「あなたの気持ち、よくわかる。私も頼まれるとNOと言えないの。今日も朝、突然、学校から電話がかかってきて『代理でクラスを受け持ってほしい』と言われて断りたかったのに受けてしまったのよ」
文章は書けば書くほど上達する。ニナにはもっとたくさん文章を書いてほしい、とリクエストしてみた。すると答えは「NO。だってイラストを描く方が楽しいから」。親にはNOと言えるのか…。
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