アロマで空間をデザイン
将来は宇宙ステーションにも香りを
- 2017年2月3日
- 2017年2月号掲載
New Business Close Up
アメリカで新たな事業を手がける人物をクローズアップするインタビューシリーズ。日本、アジア、欧州に続き、昨年アメリカ法人を立ち上げた、空間を香りでデザインするアットアロマの深津さんに聞く。
ナチュラルにこだわる
私たちの仕事はアロマスペースデザインです。アロマで空間をデザインするという考え方を、世の中に広めたいと日々活動しています。アロマスペースデザインに必要なのは、香り、デュフューザー、そして人、という3つの要素です。
香りは種類も大切ですが、それをどの程度の強さにするかという点もまた重要です。私共が提供している、一見すると「箱」に見える機器には、香りの液体が入っています。香りには定番で50の種類がありまして、どの香りがその空間にふさわしいか、選んでいきます。これらはすべて天然の香りであることにも、私共はこだわっています。
どういう空間に私共のサービスが提供されているかと言いますと、例えばレクサスのお店ですね。ショールームですごくいい香りがする、ということを感じていただくためにオリジナルでレクサスのアロマを開発しました。その空間で時間を過ごす方々、また訪れた方々に香りを楽しんでいただくことが目的です。また、全日空の香りも開発しています。B to Bのサービスに関しては、香りを開発するだけでなく、その顧客企業の空間における香りの維持管理をずっと担当させていただくので、香りの開発がスタート地点なんですね。ただし、アメリカは土地が広いので、お客様が自分でもお手入れできるようなメンテナンスの手法を、今後とっていった方がいいかもしれないと考えています。
私共がサービスをご提供する空間は、前述のようにショールーム、エアライン、ホテル、医療機関、オフィスなどです。家以外の場所にも香りを、ということです。
弊社は1998年にビジネスをスタートしました。どうして香りが必要なのか? とおっしゃる方もいらっしゃいます。ですからビジネスを成長させるためには、「香りのある空間の魅力」自体を世間に伝えていく啓蒙活動にも力を尽くさなければなりません。
イベントや展示会にブースを出したりもしています。香りが商品ですので、紙やネット(雑誌やオンライン媒体)で情報を伝えることには限界があります。香りのある空間を創造して、それを体感していただくことが一番の伝達手法となります。
また、B to Cで、個人のお客様に対しては、オンライン (http://www.at-aroma.com/blender/us) で好みを選択していただき、香りを確かめられるフリートライアルのキャンペーンも実施中です。
アメリカに進出するなら今
アメリカに進出したのは、他の拠点のベルリンや上海に比べると遅かったですね。なぜかと言いますと、アメリカよりも日本やヨーロッパの方が香りに価値を求めるのではないかと認識していたからです。しかし、展示会に関しては、4、5年前からニューヨークやロサンゼルスで出展していました。ずっと状況を見てきて、昨年、「アメリカに進出するなら今」という手応えを感じました。その理由は、アメリカでも天然物へのこだわりを人々が感じるようになってきたからです。食物に関してもオーガニックですとか、グルテンフリーやナチュラルなどがキーワードとなり、身体に良く、高品質な物に対する価値が認められるようになってきています。このトレンドには食事以外のナチュラルなものへのこだわりも含まれるはずです。
アメリカならではのゴール? 実は日本とアメリカで分けて考えているわけではありません。このビジネスの根本の考え方はボーダーレスです。文化的な背景は異なっても、人々が高品質な香りを求めること自体は変わらないと思うからです。
例えば、オンレジジュース。フレッシュなオレンジからスクイーズした、つぶつぶが入っているようなオレンジジュース。他方、無果汁で人工的な味わいのオレンジジュース。同じオレンジジュースでもピンからキリまであります。どの国に行っても「美味しいと思うのはどっち? もっと飲みたいと思うのはどっち?」と聞けば、返事は自ずと決まってくるのではないでしょうか。
お花でも、造花より生花の方が本能的に「美しい」と心に響くはず。ですから、国が違っても、人は基本的に同じだという考え方に私共は立っています。
アメリカだからこそ、という点では、将来、宇宙ステーションに香りを提供したいとも願っています。世界全体の空間の次に目指すのは宇宙です。私自身、宇宙ステーションに行って、そこにふさわしい香りをブレンドしてお届けできたらいいですね。
個人的に好きな香りは、時と場合によって細かく分かれます。それでも、私の原点にあるのは、木の香りですね。ヒノキやスギ、その香りが私を癒してくれます。出身は大分県の日田市です。スギの木に囲まれた環境で、実家に帰った時には木の香りが私を迎えてくれます。
深津恵
At-Aroma USA,Inc.のクリエイティブディレクター・アロマスペースデザイナー。
木の香りに囲まれた大分県生まれ、5年間キャビンアテンダントとして勤務後、2000年、アットアロマ株式会社に入社。アロマセラピストの国際ライセンスを取得。@aromaブランドのグローバル展開とアロマデザインを統括。
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