キューバ日系企業インタビュー
住友商事株式会社

ハバナに事務所を構える住友商事株式会社、ハバナ事務所長大久保健一さんにキューバでのビジネスについてお話しを伺った。

住友商事株式会社ハバナ事務所長の大久保さん

ビジネス

現在の弊社のビジネスは、以前にキューバに輸出された日本製建設機械等のスペアパーツの供給から再開しています。ハバナ事務所は本社直轄の組織で、最近のキューバの変化に対応すべく24年ぶりに私が常駐として2016年5月に赴任しました。事務所自体は1974年の開設以来維持しており、すでにキューバの関係諸機関とのコネクションはありますので、それも活用し、今後はキューバ政府が重点項目と位置付ける農業資機材、食糧増産、交通、医療、インフラ関係の案件を進めて行きたいと考えています。
キューバビジネスの難しい点は、世界では数少なくなった社会主義体制の国であり、その特有な諸規制、制度を理解することが大変なこと、米国の経済制裁が継続していること、恒常的な外貨不足であること等があります。

ビジネスをする際は政府関係諸機関に直接働きかけることになるので、知り合いを伝って、その知り合いを紹介してもらい、更にその知り合いにと言った具合で慎重に関係、人脈を築いていくことが大切です。時間をかけて長い目で取り組む必要のある国だと思います。
以前は砂糖の輸出が国の大きな外貨収入になっていたキューバですが、密接な関係にあったソ連の崩壊の影響で輸出が激減し、その間にブラジルが主要砂糖生産・輸出国に急成長しました。そうした背景もあり、現在のキューバの経済は決して豊かとは言えません。しかし、米国との国交回復契機に、日本も含め世界から注目されているのは確かですね。

仕事の環境の課題としてはインフラが整ってないところでしょうか。電力不足で停電がしばしば起き、時には半日くらいも回復しないこともあるので、午前中から停電になった時などはその日の仕事がほとんどできないこともあります。そういう時は割り切って、所員に「帰宅の号令」をかけますね。笑
通信環境も整っておらず、インターネット環境の悪さは、仕事上ストレスが溜まります。

キューバの農業

農業でいうと「米」は大きなポイントになります。
キューバの主食は米(インディカ米)ですが、需要約100万トンの内、国産は約60万トンで、耕地面積はあるのに自給できていないのが現状です。貴重な外貨を使って、不足分を主にベトナムやブラジルから輸入しており、外貨不足のキューバにとっては非常に残念なことですよね。
この国の稲作は、生産性が低いことが問題です。日本では1ヘクタールで約6トンの米を生産できますが、キューバでは平均3.5トンしか作れていません。肥料・農薬や農機が不足しており、多くは人力に依存しており生産効率が下がっています。稲作は栽培技術・品種改良・機械化を通じ生産効率を向上させていくことが重要で、キューバでもそれなくしては米の自給化は困難なのです。日本の経験と最新の技術を提供し、キューバの米の増産・自給化に貢献したいと考えています。

休日の過ごし方

休日はよく買い物に出かけます。と言っても、食材などを生活物資の調達が主目的です。手に入る食材等は非常に限られているので、いくつも市場を回って必要なものを買い集めて行く感じですね。
海を見ていただくと船が全く見えないことに気がつくと思いますが、日本やアメリカでは至るところで見かける漁船がキューバでは見られません。というのも、政府が国営近海漁業を停止した為、商業ベースの近海漁業というものが存在しなくなったのです。その為、国営海鮮市場もなく、新鮮魚介類を買うところがない、というより一般には出回っていません。
ただ、個人でボートを所有している一部の人たちが政府から許可を得て小規模の漁業を行っており、獲れた魚介類は直接個人経営の高級レストランに売られ、一般人は入手困難な状況です。時々そうした食材を仕入れているレストランに出向き、普段は食べられない貴重な料理を味わうのが楽しみの一つです。実は、マグロの寿司が食べられるレストランも発見しました。
生活面で不便なことは多々ありますが、親日のこの国の人々は暖かく親切で、非常に友好的です。
また、治安もまだ良いので、世界遺産・革命の歴史・音楽・美しいビーチ等々観光に訪れるには非常に魅力的な国だと感じています。昨年は22,000人以上の日本人がこの国を訪れています。

住友商事株式会社 ハバナ事務所
Sumitomo Corporation Havana Liaison Office

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