第57回 日本生まれの子どもたち

文&写真/福田恵子(Text and photo by Keiko Fukuda)

前々回、アメリカで生まれ育ったが、日本が好きで日本の学校に進学した長男ノアのことを書いた。今回は、その逆の話。日本に生まれ、親の事情でアメリカに移住した後、そのままアメリカの大学に進学した子どもたちについて紹介したい。

一人は近所に住むLさん。彼女は、アメリカ人の父親が英語学校を経営していた埼玉県で9歳まで育った。普通の日本の公立小学校に通っていた。

ところが父親の「子どもたちにはアメリカの教育を受けさせたい」との鶴の一声で、一家はロサンゼルス郊外に引っ越してきた。日本の友達と離ればなれになり寂しかったのはもちろん、ほとんど英語が話せなかったというLさんは現地校で教師やクラスメイトとコミュニケーションが取れず非常に苦労したそうだ。しかし、Lさんには夢があった。「アメリカに来た当初、言葉の壁の問題もあったかもしれないけれど、日本のお医者さんに比べてアメリカのお医者さんはあまり親切でないように感じた。だから、大きくなったら英語が苦手な移民のために役立てるお医者さんか、または医療関係の仕事に就きたいと思った」。彼女のこの言葉を聞いて、私は感動で泣きそうになった。

その夢のために、Lさんは英語も勉強も頑張った。さらにバスケットボールも始め、めきめきとその実力を発揮した。気づけば友達に囲まれていた。高校2年からは、ビバリーヒルズのシーダースサイナイ病院でボランティアを始めた。高校生でも医療の経験が積めるところをネットで検索し、自分で応募、面接を経て合格した。

学校の勉強、バスケットボール、生徒会、シェルターでの犬の世話、メキシコの孤児に募金を送る活動、さらに病院でのボランティアとLさんの高校生活は多忙を極めた。それでもどれも途中で止めることなく最後まで続けた。そんなLさんは2017年秋から東海岸にあるウェルズリー大学に進学する。ヒラリー・クリントンも卒業した名門女子大だ。「将来は医療分野か、または大好きなバスケットボールに携わる仕事に就きたい」と話す。

自主性と積極性

もう一人は、2016年秋にスタンフォード大学に入学したKさん。彼女は父親の仕事の関係で、6歳の時に千葉県からラスベガスに移住してきた。最初の頃は「学校の先生が話す英語がわからない」と泣いてばかりだった。しかし、やがて英語とアメリカ生活にも適応したKさんは、成績はオールA、水泳やピアノにも熱を入れて取り組んだ。

Kさんの父親は最初の頃、「自分の仕事でアメリカに連れてきたことに責任を感じた」と振り返りながら、「持ち前の『妥協しない性格』と『親には相談せず自分で決める自立した性格』は、自主性や積極性が重視されるアメリカ社会に向いていたのかもしれない」と語る。

そして、Kさんは水泳の試合で何度か訪れていたサンフランシスコ周辺の地域に憧れるようになり、スタンフォードの合格を勝ち取った。高校卒業時には総代を務めた。

二人とも私の友人の子どもたちだ。彼らの話を聞き「頑張る人には、言い訳をする暇などない」と改めて感じた。途中でアメリカに来たから、英語がネイティブではないから、といったエクスキュースは聞かれない。

一人目のLさんに「アメリカの大学に進学したい日本の人にどうアドバイスする?」と質問したら、彼女の答えはこうだった。「人生一度きりだからやりたいことやった方がいいよ、って言う」。その言葉は十分に大人な私の胸にも響いたのだった。

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福田恵子 (Keiko Fukuda)

福田恵子 (Keiko Fukuda)

ライタープロフィール

東京の情報出版社勤務を経て1992年渡米。同年より在米日本語雑誌の編集職を2003年まで務める。独立してフリーライターとなってからは、人物インタビュー、アメリカ事情を中心に日米の雑誌に寄稿。執筆業の他にもコーディネーション、翻訳、ローカライゼーション、市場調査、在米日系企業の広報のアウトソーシングなどを手掛けながら母親業にも奮闘中。モットーは入社式で女性取締役のスピーチにあった「ビジネスにマイペースは許されない」。慌ただしく東奔西走する日々を続け、気づけば業界経験30年。

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