日本の議会の構造にまとわる無駄
文/在米日本人フォーラム(Text by Japanese Forum USA)
- 2017年10月2日
日本は昔から資源が乏しい国と言われてきている。しかし、ここで実は資源はいくらでもある、と言ったら誰もが怪訝な顔をするに違いない。これは事実である。ここで言う資源とは「無駄」である。つまりこの無駄をなくすことにより時間と金を創生することができる。こう言われると反論する人は少ないだろう。
アメリカの議会は連邦と州のみ、
日本の議会は国、都道府県、市町村までの多重構造、無駄では?
「無駄」を考えると随分多くのことが思い浮かぶ。なぜこれほどたくさん思い当たるのだろうか。トヨタ生産方式はこの無駄を悉く省くことと理解している。しかし、これはむしろ例外的のように思える。日本人は昔から、「お上ごもっとも」とか、「長いものには巻かれろ」という考え方がある。これらが無駄をここまではびこらせた原因ではなかろうか。他国にはない「もったいない」という風土がある日本ならではである。
最初に取り上げたいのが日本の議会である。国に議会があるのは当然である。また都あるいは県にも議会があることも理解できる。しかし、市や区あるいは町や村に至るまで議会なるものが存在することが理解できない。そもそも議会とは、立法、行政、司法の三権のうちの立法組織として捉えるのであれば、果たして議会が市、区、町、村にまで本当に必要なのであろうか。例えば市の条例などがあるが、区あるいは町や村に条例が本当に必要なのだろうか。
よく調べてみると、ここで取り上げる「地方議会」の仕事とは、立法機能というよりは行政に対する監督機関と言った方が正しいようだ。その活動を行うために何人の議員が必要なのだろうか。東京都には23区あり、その区会議員は合計902人いる。この議員一人当たりの月給は約90万円、年間では1000万円を超える。この他に東京都議会には126名の議員がおり年収は平均1660万円だ。これらを見る限り、仮に東京都は例外と考えても23区に902名の議員が本当に必要なのだろうか。乱暴な言い方をするとこの半分位でもよいではなかろうか。
それでは、地方の市、町、村の議員は、果たして何人いて、幾らくらいの給料が支払われているのだろうか。
最近、島根県松江市がその合理化の努力を高く評価されたという記事を読んだ。この合理化とはいろいろな角度から評価されたに違いないのだが、その中で特に評価されたのが市町村合併に伴い市会議員の数を46名に制限したことだ。これらの市会議員は9つの委員会のメンバーになっている。この委員会とは市の新しい企画を討議するところらしい。とすれば、これはもはや立法の世界の話ではなく明らかに行政の一部と考えた方が良いように思う。
ここで少し視点を変えて考えてみよう。議員さんたちは4年ごとの選挙で選ばれる。おのずと見識のある人たちが選挙民によって選ばれるに違いないのだが、この選ばれた人たちは市の企画を審議することに詳しいとは限らない。しかも4年ごとにメンバーが変わってしまう。果してこの人たちが最適なのだろうか。むしろ、市の中に企画室を設けここで立案した案件を「議会」とやらで最終審議してもらってはどうだろうか。これであれば議員さんが46名も必要とは思えない。議会とやらはあくまでも行政の監督または諮問機関ととらえるべきで、せいぜい今の四分の一ほどでよいのではなかろうか。
他方、議員さんの観点からみれば4年ごとに選挙があり、そのための努力も怠ることはできない。その費用も莫大である。46名が選ばれるとなればおそらくその2-3倍ほどの立候補者がいるに違いない。その人たちが使う費用も莫大なはずだが、その結果どのような価値が生まれることになるのだろうか。今の四分の一ほどの議員さんが選ばれるために使う選挙費用はやはり四分の一に節減できて、さらに任期も4年ではなく6年に延長すれば、これも反比例で費用の節減となるはずである。しかも任期の延長は、じっくり腰をすえて本来の仕事に専念することができ、仕事の習熟度、知見度が増すことで生産性の向上にもつながるのではないだろうか。
アメリカにおいて議会と呼ばれるものは、連邦議会と州議会のみで、議員も連邦議会の上院議員と下院議員、そして州議会議員(ここでも上院・下院あり)のみで、これらは全て立法府である。州の下部構造としてTownshipと呼ばれる郡及び市があるが、そこには立法府はなく、議員は存在しない。郡や市において、選挙で選ばれるのはCouncil(評議員)と呼ばれ、担当分野ごとに責任を負う行政官である。
この議会という切り口で比較すると、立法府としての議会の仕組みが簡潔なアメリカに対して、日本の議会は多重構造となっていて、その議会及び議員の機能も立法または行政かが判然としない。ここに大きな無駄が存在しているように思える。
この無駄をなくすには、地方の市町村の議会とは、あくまでも行政の監督機関であるという新しい発想に変えるべきと考える。それによって、議会の多重構造を解消することで行政の生産性を向上させ、さらに議員数を減員することで地方政府の歳出の節減を可能にできるのでないだろうか。
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