Muginoho International, Inc.
アメリカのビジネスは、今

Text by Saori Shibata

今、アメリカのビジネスシーンはどうなっているのだろう?
困難をどう乗り越えたのか。成功の鍵はどこにあるのか。
キーパーソンに、アメリカでのビジネスのヒントを聞いた。

サクサクのシュー皮のシュークリームが人気のビアードパパをアメリカで出店しているMuginoho Internationalの President/CEO、Kaz Nakamura氏に話を聞いた。

これまでのキャリア

日本で銀行に10年勤めて、その後オーストラリアに留学しました。帰国後は米系のコンサルティング会社で働き、その後2004年に渡米、中古車買取・販売のガリバーのUSビジネス新規立ち上げに約5年間参画しました。その後は日本でミスミグループ本社に勤務、2013年6月にビアードパパのUSビジネス推進のため、ロサンゼルスに戻ってきて、今に至ります。

アメリカでのビアードパパビジネス再建のチャレンジ

2013年、私がビアードパパのアメリカ事業再建に参画し始めた際、ビアードパパはフランチャイズビジネスをしながらもフランチャイザーとしての役割を果たせておらず、店舗ごとにブランドアイデンティティも統一されていませんでした。世界各国に売っていたフランチャイズ権のマネジメントもできておらず、それらの整理をしたり、USオフィスでは新方針を立て、それに対する逆風が強かったりと、赴任当時はチャレンジが多く大変でした。

ガリバーUSAはゼロからのビジネスの立上げでしたが、ビアードパパのように既にある体制を立て直すのは同じアメリカでのビジネスでも全く違いました。

8月にヒューストンにオープンしたFC店。オープン時には大行列ができた

軌道に乗り始めたのは2018年から

フランチャイズの整理を2013年から始め、アメリカ国内で40数店舗あった店舗数を20店舗まで減らし、2018年からやっとビジネスが軌道に乗り始めたました。
単価が安いシュークリームは消費者のデスティネーションにはなりません。歩いていて、たまたまお店に寄る人がほとんどなためフットトラフィックが肝。NYなどの人口密集地の方が集客しやすいため、2016年から東海岸進出に力を入れオフィスも開設、現在東海岸には7店舗展開しています。
2018年からは、従来からの市場である西海岸、東海岸に加え、南部への進出にも取り組みました。その結果、2018年にはテキサスのヒューストンとダラスに新店舗をオープンしましたが、どちらも初日には長い列ができ、今でも多くのお客様に喜んでいただいています。
テキサスでは2019年初めにさらに2店舗のオープンが決まっています。

永谷園グループになったことでチャレンジしていきたいこと

ビアードパパ以外のブランドをもっと増やしたいと考えています。ビアードパパのフランチャイジーは日本人以外の方がほとんどですが、日本文化、日本食に興味がある人が多い。そのようなオーナー様に、他の日本発のブランドをフランチャイズ展開することで、オーナー様のニーズに応えることができますし、弊社としても新規開拓のコストをセーブすることができます。
食べ物は流行の移り変わりが早いので投資回収できたタイミングで、別ブランドを提案できるのもメリットです。新しいフランチャイジー見つけて、そこから信頼関係を築くのはとても大変ですので、信頼関係が既にあるフランチャイジーと共にビジネス拡大していくことが目標です。

LAにある直営店

ロングタームのゴール

ロングタームで達成したいことは3つほどあります。1つ目は、サプライチェーンの上流、つまりものづくりから販売までを一貫してカバーすることです。フランチャイズビジネスはイニシャルフィーとロイヤリティが基本の収入源ですがそれだけだと面白みが少ないと考えています。フランチャイザー(Muginoho)から冷凍生地(Muginohoのシンガポール工場で作ったもの)などの材料をフランチャイジーに購入してもらい、物販収入を増やせる仕組みを作りたいです。2つ目は、ポートフォリオの充実。ビアードパパ以外のブランドをアメリカで立ち上げていきたいと考えています。最後に、“日本食ブランド”をアメリカに広げていきたいというモチベーションを持ったアントレプレナーに対してのインキュベーション、コンサルサービスを提供できたらと考えています。

中村さんが仕事をする上での軸

これまでのキャリアで中古車からシュークリームまで幅広い産業に携わってきている中村さんの仕事を選ぶ上での軸を教えていただきました。

1つは海外軸です。売るモノやサービスについて、特にこれ、というこだわりはありませんですが、日本のものを海外に売ることをいつも念頭に置いています。日本のブレゼンスが下がっているのを仕事を通じて感じており、もっと日本の良さを世界にアピールしたいという気持ちが強いため、インターナショナルに働くことがコアにあります。

2つ目は事業軸です。ガリバーのUS立ち上げを通して事業全体を見ることに楽しさを感じ、アドレナリンが出るようになりました。コンサルティングファームでの仕事も楽しいですが、戦略のご提案をした先の会社が、その戦略をどのように実行してどのような結果を出したのかについてダイレクトにかかわることが少なく、不完全燃焼でした。私自身は、戦略立案から実行まで、事業をフルセットで見ることに面白みを感じます。

大変なことも多いですがやることがあればあるほど楽しく、チャレンジし続けられるうちはどんどんチャレンジしていきたいと考えています。

今の日本の20代30代の人に伝えたいこと

日本社会は今、マクロで見たときに、安易な社会になっているように感じます。生活が便利になりすぎていて、日本にいればお金持ちにはなれないけど、食いはぐれる事はない。また、制約がありすぎて、頑張ったことへの見返りが得られないことも多く閉塞感の漂う世の中に感じます。しかし、今の20代30代の人にはリスクをとって、闘争心、チャレンジ精神をもってほしいです。
失敗しても失敗してもチャレンジし続けることが大切だと信じています。

この記事が気に入りましたか?

US FrontLineは毎日アメリカの最新情報を日本語でお届けします

この著者の最新の記事

関連記事

アメリカの移民法・ビザ
アメリカから日本への帰国
アメリカのビジネス
STS Career

注目の記事

  1. 2025年10月8日

    美しく生きる
    菊の花 ノートルダム清心学園元理事長である渡辺和子さんの言葉に、「どんな場所でも、美しく生...
  2. 2025年10月6日

    Japanese Sake
    日本の「伝統的酒造り」とは 2024年12月、ユネスコ政府間委員会第19回会合で、日...
  3. アメリカの医療・保険制度 アメリカの医療・保険制度は日本と大きく異なり、制度...
  4. 2025年6月4日

    ユーチューバー
    飛行機から見下ろしたテムズ川 誰でもギルティプレジャーがあるだろう。何か難しいこと、面倒なこ...
  5.        ジャズとグルメの町 ニューオーリンズ ルイジアナ州 ...
  6. 環境編 子どもが生きいきと暮らす海外生活のために 両親の海外駐在に伴って日本...
  7. 2025年2月8日

    旅先の美術館
    Norton Museum of Art / West Palm Beach フロリダはウエ...
  8. 約6億年も昔の生物たちの姿が鮮明に残るミステイクン・ポイントは、世界中の研究者から注目を集めている...
ページ上部へ戻る