水野洋亜
女優・モデル

高度な資格や専門知識、特殊技能が求められるスペシャリスト。手に職をつけて、アメリカ社会を生き抜くサバイバー。それがたくましき「専門職」の人生だ。「天職」をつかみ、アメリカで活躍する人たちに、その仕事を選んだ理由や、専門職の魅力、やりがいについて聞いた。

もっと自分を使って表現したい

もともとこどもの頃から劇団ひまわりに入っていたり、合唱などをやったりしていて、舞台には興味がありました。でも結構シャイなこどもだったので、途中からは「表舞台より裏の方が向いているのかも」と思うようになりました。それで、私の姉がファッションデザイナーだったこともあり、ファッションを学ぼうと思って単身でニューヨークへ渡りました。

ファッションの大学を受験するために予備校に通っていた頃、スカウトされてモデルのお仕事を始めたんです。最初の頃はガチガチで、うまくできなくて。そんな自分が嫌で改善したいと思い、演劇の学校に通うようになりました。そしたら、もっと演劇を続けたいと思うようになったんです。ファッションの大学を受験して受かったんですけど、結局大学には行かず、方向性を変えて演劇の基礎を学ぶことにしました。

学校では、ウタ・ハーゲンという有名なドイツの女優さんのメゾット演技を学びました。私が学んだのは、ハーゲンメゾットという演技。役の背景を構築し、その人物と自分を重ね合わせ、その人物が生きる世界を確信できるまで知り尽くす演技術です。エクササイズの基本となるのが、自分自身を2分間で演じること。普段、何げなく取っていた行動の目的や背景、目的を達成する時に起こる障害やその時の選択など、自分を演じることで自分自身をよく知ることができ、のちに役を生きることに繋がっていくんです。

約2年間、演劇の学校で勉強し、1年ほど前にロサンゼルスに拠点を移しました。ニューヨークは舞台演劇が発展していますが、ロサンゼルスはどちらかというとテレビや映画のイメージ。私は昔から映画をよく見ていたこともあり、映画の世界観がすごく好きなんです。テレビや映画の世界に興味があったので、拠点を移すことに決めました。

アメリカではいかに自分をはっきり出すかが大事

私は謙虚な部分が強くあって、たまに変な方向に出てしまうんです。自分をアピールしすぎないほうがいいんじゃないか、話しすぎないほうがいいんじゃないかとか、自分の中で「日本人とは」みたいなものを勝手に作っていました。でも、実際社交場に出ると、自分をアピールしている人のほうが成功しているんじゃないかなって。客観的に見ていて、まったくしゃべらない人よりも自分の芯をしっかり持っている人のほうが、「この人と一緒に働きたい、一緒に何かしたい」と自分でも思うなって感じたんです。

謙虚さというのは日本人のいいところだとは感じるんですけど、アメリカに住むとなると、もう少し柔軟にマイナスにならないように自分を出していかなきゃと思うようになりました。はっきり言える環境というのは最初はカルチャーショックだったけど、今ははっきり言っても非難されないというのが楽になりましたね。

また、私は壁を作るタイプで、弱いところやプライベートなど、自分をさらけ出すのが苦手なんです。なので、演劇学校に通うのはかなりの挑戦でした。壁を破ってステージの上で自分を自由に表現しなきゃいけないのに、先生から何度も「バリアがすごく強い」と言われて、それが苦労しましたね。今でも苦戦しているところです。

逆に、今までの自分が役に立ったなと思うこともあります。私はもともといろんなことに興味があって、いろいろな習い事をしてきたんですね。父には「一つのことに絞れないのが欠点だ」と言われていました。でも女優という仕事をやっていて、日々いろいろなことが生かせる瞬間というのがいっぱいあって。女優って自分そのものを使う仕事なので、人間としておもしろみがないと演技に生かせないと思うんです。今まで多種多様なことをやってきて、最近はだんだんと女優に生かせる部分が見えてきました。

今後の目標

自分の中で、興味のある分野とない分野ははっきりしています。「自分のやりたくないことは絶対やらない」ということではないですが、自分のやりたいことは見失わないようにやっていきたいというのは常に思っています。今はいろんなことに挑戦すべきなのでオーディションの数をこなしているけど、なんでもやりたいというのは違うと思っていて。自分の中で「これは違う」「これはやりたい」というのははっきり言えるように、芯の部分はしっかり持っていきたいです。

将来的には、言葉を使わなくても「この女優さんおもしろいな」って思ってもらえるような役者になりたいですね。セリフがなくて、一見誰でもできるような役柄でも、「この女優じゃないとこの役はできなかったな」と思ってもらえるような、表現の仕方やちょっとした仕草で魅力やオーラが出せるような役者になりたいです。

今はまず、たくさんオーディションに挑戦したいです。英語で演じるということが、まだ自分の中で不自然な部分があって。日本語で演じるよりも10倍の努力が必要で、覚えたセリフをただ言うのではなく、オーディションで自然にありのままでいられるようになるにはまだ時間がかかりそうです。たくさん準備していてもオーディションは時間が限られているので、準備したものをすべて出せるわけではない。限られた時間でいかに自分らしさをアピールできるかが重要だと思います。

また、演劇とは離れますが、私はこどもの頃から生け花をずっと続けてきました。今も週1は生けています。なので、生け花を自分の演技に取り込めたらいいな、と思っています。実はつい最近、こっち(アメリカ)でプロデューサー、監督、作曲家を見つけて、生け花を使った短編映画を撮影したんです。私が脚本を書きました。

生け花にも女優にも、共通する部分があると思うんです。どちらも大事なのはバランス。押すところもあれば、引くところもある。自分を見失わないよう謙虚になりすぎずに、たまには自分を出していくことが大事なのではないでしょうか。

プロフィール
東京都港区生まれ。幼い頃から歌やダンス、生け花など幅広い分野の芸術・文化に興味を持つ。5歳から始めた生け花では、池坊師範を18歳で取得。日本に加え、海外の芸術・文化にも強い興味を抱き、単身で渡米。ニューヨークの演劇学校で本格的にメゾット演技を一から学ぶ。ロサンゼルスに拠点を移し、現在は女優兼モデルとして活動。大手企業であるKeds、Google、Smirnoffのキャンペーンにモデルとして起用される。映画『Yuraq』に出演。HBOのテレビドラマシリーズ『Westworld』Season 3出演予定。バイポラーサンシャインのミュージックビデオに主演で出演予定。幅広い分野で活躍できる日本人女優として、さまざまなジャンルの役柄に挑戦している。

公式ホームページ:yoamizuno.com

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齋藤春菜 (Haruna Saito)

齋藤春菜 (Haruna Saito)

ライタープロフィール

物流会社で営業職、出版社で旅行雑誌の編集職を経て渡米。思い立ったら国内外を問わずふらりと旅に出ては、その地の文化や人々、景色を写真に収めて歩く。世界遺産検定1級所持。

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